二年経ってないよ?【凛】

「二年後って言ってなかった?」


「確かに……。あの時は、そう言ったけどね。結婚式おいでって誘ってくれてね」


「まっつんさん?」


「そう。だから、来たんだ。あっ、でも。凛さんに会えるって下心はなかったよ」


凛君は、やっぱりかっこいい。


「会えてよかった」


「僕も……。後、これ、よかったら使って」


「ありがとう」


凛君は、ハンカチを差し出してくれる。


「凛さんが泣いてるのって、祝福じゃないよね?」


「えっ……?」


「誤解しないでよ。これでも、僕だって凛さんを愛してたんだよ。だから、わかるんだよ。その涙は、喜んでるわけじゃないって……」


私は、凛君をズルい場所に連れて行こうとしたのに……。凛君は、相変わらず真っ直ぐのまま。


「何でもないよ」


「あーー。そういうのやめてよ。僕に気なんか使わなくていいから」


「凛君……。足は、もう大丈夫?」


「話しそらさないでよ」


凛君は、怒った顔で私を見つめてくる。


「ごめんね。本当に大丈夫だから」


「やっぱり、僕には教えてくれないんだね」


「凛君に迷惑かけれないよ」


「迷惑だなんて思わないよ。好きな人の役に立ちたいんだ」


「相変わらず、凛君は真っ直ぐだね」


その真っ直ぐさが羨ましい。


「凛さん。僕ね……あれから蓮見と向き合おうとしてるんだ」


凛君は、私の言葉を気にしないように話した。


「それって付き合うって事?」


「付き合うかどうかはわからないよ。だけど、向き合いたいっては思ったんだ」


「そっか……。それは、いい事だよ」


「蓮見の父親の事は知らないでしょ?」


凛君の言葉に、確かに蓮見君がどうなったか知らないと思った。


「あの人、懲役ついたんだよ。僕と凛さんの旦那さんを刺したからね。殺人未遂ってやつ」


「そうだったんだ……」


背中にゾクゾクと寒気が走るのを感じる。あの日、あの場所で……。

凛君や龍ちゃんを刺した蓮見君の目を思い出してしまった。


「反省してないよ」


「えっ……?」


「あの人に会いに行ったんだよ。蓮見についてきてくれって頼まれて」


「そうだったの」


「あの人は、凛さんの事を嬉しそうに僕に話してたよ。時間がまるで止まってるみたいだった」


凛君のオレンジジュースを持った手が震えているのがわかる。


「私の代わりに怒ってくれたの?」


「凛さんの事を傷つけてたから……。今もずっと。凛さんが侮辱されてると思った。だから、許せなかった」


あの日の蓮見君の言葉やあの日々が浮かんでくる。


「ごめんなさい。こんな日に、あの人の話しなんかして……」


「ううん。大丈夫だよ」


「知りたくなかったでしょ?」


「どうかな……。知れてよかったとは思うよ。だって、暫くは出てこれないわけだから」


「それは、間違いないよ。出てきたら、病院に入院させるって蓮見が言ってたから大丈夫だと思う。精神的におかしい部分があるからって……」


「そっか……」


蓮見君の娘は、強いと思う。


「もう、あの人の話しは終わりにしよう。それで、凛さん。落ち込んでるのは、星村さんと何かあったからだよね?」


「落ち込んでないよ。大丈夫だよ」


凛君は、私の顔を覗き込んでくる。


「嘘でしょ?星村さんに迷惑かかる事?例えば、週刊誌に載るとか……」


私は、凛君の言葉に目を見開いていた。


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