祝福と呪い【凛】

まっつんさんと理沙ちゃんがみんなに向かって話をしている。


みんなが同じ気持ちでいるこの空間は素敵。


二次会は、予定通り終わった。


「凛ちゃん、来てくれてありがとう」


「向こうに住むんだよね?」


「あっ、うん。そうなるかなーー。あっ!でも、まだこっちにいるから。何かあったら話いつでも聞くから」


「ありがとう、理沙ちゃん」


私は、花嫁に気を使わせてしまっている。


「凛ちゃん。何かあったよね?」


「えっ?何もないよ。大丈夫、大丈夫」


「嘘だよ。その笑顔は……」


「そんな事ないよ!大丈夫だよ。気にしすぎだよ」


私は、理沙ちゃんに心配かけないように笑ってみせた。


「凛ちゃん、理沙には嘘つかないでよ!凛ちゃんが幸せでいてくれなくちゃ嫌だよ」


理沙ちゃんの言葉にまっつんさんが近づいてくる。


「理沙。凛さんに迷惑かけたら駄目だろ?」


「そんな迷惑とかじゃないから……」


「だって理沙は、凛ちゃんが幸せでいてくれなきゃ!嫌なの」


「私、幸せだよ!凄く幸せだから大丈夫だよ」


私は、苦笑いにならないようにうまく笑って見せた。


「ほら、理沙。凛さんは、幸せだって言ってるだろ?」


「嘘だよ。今の凛ちゃん。理沙に嘘ついてる」


「ついてないよ!本当に幸せだよ。二人の結婚式のお陰で拓夢にも、また会う事ができて感謝してるんだよ」


「凛ちゃん。やっぱり、何かあったんだよね?たくむんと喧嘩した?」


「そんなのしないよ。心配しすぎだよ。理沙ちゃん」


「本当に本当?」


「本当に本当」


理沙ちゃんは、少しだけ考えてから「それならいい」と納得してくれた。


本当は、嘘。


さっきから、週刊紙に載ったらどうしようかとずっと考えてる。


拓夢の夢を壊したくない。


龍ちゃんに迷惑をかけたくない。


そう思えば思うほど、うまく笑えていないのが、自分でもよくわかる。


「凛ちゃん。せっかく会えたんだから、たくむんとたくさん話ししてよね。結婚式(ここ)にいる人達は、みんないい人ばかりだから……」


「わかってる。ありがとう、理沙ちゃん」


「理沙。挨拶行くぞ」


「うん。じゃあ、また後でね」


理沙ちゃんは、まっつんさんに連れられて向こうに行ってしまった。


「お祝いの席なのに、呪われてる顔してるな」


「りゅ、龍ちゃん」


「ははは。はい!これ」


「ありがとう」


龍ちゃんは、りんごジュースを渡してくれる。


「何で、りんごジュース?って顔してる」


「当たってる」


「甘いものでも飲んだら落ち着くかな?って思って……」


龍ちゃんは、そう言って柔らかく笑う。


私は、龍ちゃんのこういう所が好きなんだって改めて思った。


「星村さんの夢。壊しそうで怖い?」


私は、そっと頷いた。


「もし、載ったら……。俺も対処するから、大丈夫だよ。凛、一人でどうにかしなくたっていいんだから……。だから、今日は考えるのはやめよう」


「うん……。あのさ、龍ちゃん。さっきの……」


「ごめん。まさかの母さんからだ」


「あっ、うん」


龍ちゃんは、慌てて電話に出る為に外に行ってしまう。


さっきの龍ちゃんの言葉。ちゃんと聞きたかった。本気で言ってるのって……。


もう、私の未来はそれしかないのって……。


「それは、嬉しくて泣いてるわけじゃないよね?」


「えっ……。あっ……」


「久しぶりだね。元気にしてた?」


「な、何で!!」


「酷いね。仲良くなったから呼んでくれたんだよ。二次会だけね」


私は、驚いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る