エスパーみたいだね【凛】

「凛君は、エスパーみたいだね」

「何それ?今をときめく大スターなんだよ!考えたらわかるよ」

「確かに、それもそうだよね」

「週刊誌に載ったら迷惑かかるのはわかりよ。だけど、あいつの覚悟はそんなんじゃないと思うよ」


凛君は、拓夢を睨み付けるように話す。


「あいつって……」

「ごめん。だけど、その覚悟なかったら凛さんと会ってなかったでしょ?だから、気にする必要ないんじゃないのかなって思うんだよ」

「凛君は、優しいね」

「優しくなんかないよ」

「ううん。優しいよ」


今だって……。

私を好きだって言ってくれた時だって……。

言葉にはしなかった。

したらまた、凛君を傷つけてしまいそうだったから……。


「久しぶりだね」


私は、その声に顔を上げる。


「お久しぶりです。あ、あの……」

「そんなに固くならなくたっていいよ。俺は、もう怒っていないから……」


龍ちゃんは、凛君に優しく笑いかける。

本当に、神様みたいな人。


「あの、二次会からなら参加しないかって呼ばれて……。それで、凛さんを見つけて。嬉しくて、つい話しかけちゃって」

「だから、怒ってないって……。まだ、君が凛を好きだと思ってくれていて嬉しいよ」


龍ちゃんは、ニコニコ笑いながら凛君に話す。


「あっ!!でも、今は向き合いたい人がいて。だから、その子の気持ちに答えようってしてて」

「蓮見の娘?」

「は、はい。そうです」


凛君の言葉に龍ちゃんは頷いていた。


「彼女は、たくさん傷ついただろうから……。君が向き合って支えてあげる事はいい事だね」

「は、はい。僕もそう思ってます」

「だから、そんなに怯えないでくれよ。で、足の方はもう大丈夫?」

「はい。大丈夫です。もう、この通り」


凛君は、大袈裟に足をあげて見せた。


「よかった。あの時、君がいなかったら俺は刺されていたし……。凛もどうなってたかわからない。本当にありがとう。君には、感謝してもしきれないよ」

「そ、そんな。大袈裟ですよ。僕のせいで、凛さんがあんな事に巻き込まれてしまったんですから……。謝らなければいけないと思っていました。凛さん、旦那さん。ごめんなさい」


凛君は、私と龍ちゃんに頭を下げてくる。


「そんなの気にしなくていいよ。悪いのは、蓮見君だから……」

「そうだよ!君じゃない。蓮見が悪いんだよ」

「そんな風に言ってくれてありがとうございます」


龍ちゃんは、凛君を見て笑う。


「気を遣わないでって言われたって気を遣うのは当たり前だね」

「ごめんなさい。やっぱり、まだ緊張します。怒ってないのはわかっていても……」


凛君は、龍ちゃんを見ながら何度も会釈をした。


「来てくれたんだな。嬉しいよ」

「あっ!はい。じゃあ、僕。話してきますね」

「うん」

「凛さん。二年後の約束は、今日とは別ですからね」

「わかってるよ」

「じゃあ、また。どこかで会えたら……」


凛君は、手を振ってまっつんさんの元に行った。


「二年後?」

「ああ。うん。二年後、会えたら友達になってって言われてね」

「へぇーー。友達か!いいんじゃない?」

「うん……。あのさ、龍ちゃん」

「どうした?」

「さっきの話だけど、まだ考えたくないし。考えられない……」

「そうだよな。無神経だったよな……」


私は、首を横に振る。


「囚われて欲しくないのはわかってるから……。それでも、まだ私は……」

「わかってる。凛」


龍ちゃんは、私の手を握りしめる。


「どんな結末を迎えようと進んだ先にしか答えはない……だろ?」

「そうだね」


私と龍ちゃんが大好きな映画の主人公の言葉。私達は、何かある度にこの言葉を言っていた。

これからも、進んで行くしかないんだ。


私は、拓夢を見つめる。

どんな結末を迎えようとうけいれるしかないんだよね。


拓夢は、その覚悟が出来てるのかな……?


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