そう言うなら……(凛)
「本当は、信じられるか自信はないわよ。でも、二人がそう言うのなら信じてみてもいいのかもね。ただし、一回だけよ」
そう言うとまっつんさんのお母さんは、私に手を差し出してきました。
「これですか?」
私は、鞄から取り出した婚姻届を差し出しました。
「ここにサインしてもいいかしら?」
「勿論です」
私は、まっつんさんのお母さんにボールペンを渡しました。
「おめでとうって言葉より、優太はきっと喜んでくれる気がするのよ」
そう言いながら、まっつんさんのお母さんらは笑っていました。
拓夢が、テーブルの上のコーヒーをのかせました。
まっつんさんのお母さんは、テーブルを拭いてから名前を書いてくれました。
「印鑑は、優太があるでしょう」
まっつんさんのお母さんは、私に婚姻届を渡してくれました。
婚姻届には、達筆な文字が書かれました。
「俺も書くよ」
龍ちゃんは、そう言って婚姻届にサインをした。
「これで、私の役目は終わりね」
まっつんさんのお母さんは、そう言うと笑ってくれた。
「ありがとうございました」
拓夢は、まっつんさんのお母さんに頭を下げた。
「いいのよ。別に……。じゃあ、帰るわ」
「俺達も行こうか」
「うん」
龍ちゃんは、立ち上がってお会計の伝票を持って行った。
私は、鞄に理沙ちゃんとまっつんさんの婚姻届をしまった。
喫茶店の入り口を出るとまっつんさんのお母さんは、帰って行った。
「私達も行こう」
私の言葉に、龍ちゃんは首を横に振った。
「どうしたの?」
「婚姻届は、俺が先に渡してくるよ」
「何で?」
「凛は、星村さんと話してからおいで」
「龍ちゃん……」
「ほら、婚姻届」
「あ、うん」
私は、龍ちゃんに婚姻届を渡した。
「じゃあ、凛をお願いします。星村さん」
「は、はい。ありがとうございます」
「いえいえ」
龍ちゃんは、歩いて行ってしまった。
私は、拓夢と二人になった。
「歩きながら話そうか?」
「うん」
私達は、歩きながら話をする。
「最近は、どう?色んな事……」
「乗り越えられた気がしてたけど、やっぱり駄目だね。ずっと結婚してなかった同級生が結婚したんだけどね。出来ちゃっただった。楽しそうにSNSに載せてきた。いままで、使ってなかったのにね」
私は、拓夢を見ずに話した。
「後だしジャンケンなら絶対勝てるでしょ?それなら、私だってもっとゆっくり結婚すればよかったのかなーなんて」
拓夢には、本音が言える。
「ごめんね。こんな話しちゃって……」
「凛より後に結婚した人は、みんなママになったの?」
私は、拓夢の言葉に頷いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます