凛の辛さ……。【拓夢】
まっつんのお母さんを見送って、龍次郎さんがいなくなって、俺は凛と話をしていた。
後だしじゃんけんか……。
まだ、凛が苦しんでるのがわかる。
「ごめんね。気にしないで」
平気なフリをして笑う凛の姿に、俺は腕を掴んでいた。
「気にするに決まってるだろ!」
「拓夢……」
「凛が、苦しいなら苦しいって言って欲しいんだ。悲しいなら悲しいって……。付き合えなくたって、傍にいれなくたって、俺は凛を……」
俺は、それ以上の言葉を伝えるのはやめる。
「拓夢……。私、まだ期待していたんだと思う。まだ、母親になれるって思いたかったんだよね。馬鹿だよね。無理なのわかってるのに……。それでも、友達がなってたら私も出来るんじゃないのって思うんだよね。まだ、まだいけるんじゃないのって思っちゃうんだよね」
俺は、凛にハンカチを差し出した。
「ごめんね。何か私……」
「凛が、一人で泣いてなくてよかった。そう思ったら、何かさ……」
俺は、凛を見ながら泣いてしまう。
「拓夢……何で泣くの?」
「凛が泣いてるからだろ?」
あの頃より、凛の痛みをダイレクトに感じるようになった気がする。
毎日、毎日、音楽に向き合って、歌詞を書いているせいかもしれない。
凛の痛みや悲しみが、俺の身体中を駆け巡る。
それは、まるで全身に針を刺されているような痛みで……。
「拓夢。私、また期待してたの……。駄目だってわかってるのに期待してた。だから、落ち込んだんだと思う。馬鹿だよねーー。期待したって、裏切られるってわかってるのに……」
「そうやって、平気なフリして笑うなよ!期待したくなるのは、当たり前だろ?普通の事だよ」
俺は、凛の手を握りしめる。
「駄目だよ。また、書かれちゃうよ」
「凛とだったら、書かれたっていいよ」
凛は、俺の手を振りほどく。
「そんなの駄目だよ。私は、もう二度と拓夢の邪魔をしたくない」
「凛……」
悲しいけれど、凛との現実。
手さえも簡単に握れない程の関係になったのだ。
「そんな悲しい顔しないでよ!行こう、二次会」
平気なフリをして笑う凛をこの場所で抱き締めてあげる事さえ叶わない関係。
そんなの望んでない。
俺が、この場所にきたのは……。
俺は、凛の腕を掴んで引き寄せていた。
「拓夢……」
「俺、凛に新しい
凛は、離れようと抵抗していたけれど……。
俺の言葉に抵抗するのをやめてくれる。
「拓夢……。私、まだまだ不安定なんだと思う。私、お母さんになりたかったから……。無理だってわかってても、ずっと諦めたくなかったから」
凛は、泣きながら話していた。
「わかってるよ、凛」
俺は、あの頃より深く凛の気持ちが伝わってきて痛くて痛くて胸がちぎれそうで……。
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