無理なものは無理(凛の話)
龍ちゃんの言葉を聞いても、まっつんさんのお母さんの思いは変わらなかった。
「わかってるのよ!決まってるの」
「それは、違うと思います」
「あんた達みたいな!普通にぬくぬくと育ったような人間に、何がわかるのよ」
龍ちゃんは、穏やかに話し続けていたけれど、その言葉に少しだけ力を込める。
「普通ですか……。そう見えているとしたら、私も凛も幸せです」
普通というカテゴリーに分類されている。
確かに、幸せな事なのかもしれない。
まっつんさんのお母さんは、龍ちゃんの言葉に何も言わずに黙っていた。
暫く沈黙が、続いている。
私は、話す事にした。
「子供がいるあなたには、子供が出来ない私の苦しみなど理解出来ないでしょうね」
私の言葉に、三人が私を見つめている。私は、気にしないように話す。
「その苦しみを痛みを理解出来ないから一緒にいれないと切り捨てる事は、簡単な事だと思いませんか?」
「何が言いたいの?」
まっつんさんのお母さんは、私を見つめてそう言った。
「理沙ちゃんには、わからないと切り捨てるのは、簡単な事です。でもね、理沙ちゃんは理沙ちゃんなりの痛みや苦しみを味わってきたわけです」
「だから、なに?」
怯みそうになる私に気づいたのか、龍ちゃんが膝の上に置いていた私の手を優しく握ってくれる。
「理沙ちゃんには、無理だと決めつけて欲しくありません。理沙ちゃんは、子供がいない私の苦しみも痛みもきちんと理解してくれていました。私は、二人ならきちんと夫婦としてやっていけると思うんです」
まっつんさんのお母さんは、驚いた顔を私に向けている。
「どうせ無理だとか理解されないとか私もずっと思っていました」
まっつんさんのお母さんは、目を伏せる。
私は、拓夢を見つめながら話し出した。
「そんな私の気持ちを変えてくれたのは、SNOWROSEの皆さんとの出会いでした。皆さんは、私の事を理解しようとしてくれた。心は無理でも頭できちんと理解しようとしてくれたのがわかりました。だから、私も皆さんにちゃんと本当の事を話せた。誰にも理解されない、わかってもらえない。そんな痛みや傷を見せる事が出来たのです」
拓夢は、私の言葉を受け取ってくれた。
「お母さん、まっつんと理沙ちゃんを見守ってあげませんか?もしかしたら、お母さんが言う通りになるかもしれない。そうだとしても、二人が結婚したのだから認めてあげてもらえませんか?」
まっつんさんのお母さんは、顔をあげて拓夢を見つめた。
「あんなに小さかったのに、立派な事言うようになったのね」
そう言って、拓夢を見つめる。
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