話し合い(拓夢の話)

まっつんと理沙ちゃんの結婚式、披露宴は、無事に終了した。


「拓夢、集まるって!行くだろ?」


「うん、あっ、しゅんは?」


「にい……姉ちゃん送りに行ってるわ!」


「わかった」


「じゃあ、後でな」


「うん」


かねやんは、そう言っていなくなった。


まっつんと理沙ちゃんは、まだ出てきてなかった。二次会はないけど、みんなで集まるって事だったんだろうな……。


「勝手にサインするなーー」


大きな声が聞こえて、俺は走り出していた。


周囲は、ザワザワしている。


「まっつんのお母さん!何してるんですか!」


俺の言葉を無視して、まっつんのお母さんは凛から紙を取り上げようとしている。


「勝手にサインするなーー」


「やめて下さい」


龍次郎さんは、まっつんのお母さんの腕を優しく掴んだ。


「松田君が、結婚するのが嫌なんですか?」


お母さんは、黙り込んでいる。


「ここだと皆さんに迷惑がかかりますから、向こうに行きましょう」


龍次郎さんの言葉に、俺も凛も龍次郎さんもまっつんのお母さんも歩いて行く。


結婚式場を出るとすぐに喫茶店があった。


俺達四人は、そこに行く。


凛は、預かっている婚姻届を丁寧に折り畳んで大事に持ち歩いている。


喫茶店に着くと、まっつんのお母さんは、凛の手から婚姻届を取り上げようとする。


「おばさん、危ないから」


俺は、隣に座って止める。


まっつんのお母さんは、イライラしながらもやめてくれた。


「どうして、松田君の結婚に反対なんですか?」


いつだって、龍次郎(このひと)は、怒る事なく冷静に話す。


店員さんが、現れてコーヒーを4つ、俺は頼んだ。

皆、それに反対はしなかった。


「優太には、結婚なんか無理なの」


まっつんのお母さんは、さっきより冷静になっていた。


「やってもいないのに、無理だと決めつけるのはおかしいですよ」


龍次郎さんは、まっつんのお母さんを宥めるように話す。


「無理なのよ!私と同じ人間だからわかるのよ」


そう言った瞬間、コーヒーがやってきた。


「お母様とまっつんさんは、違いますよ」


凛の言葉に、まっつんのお母さんは凛を見つめている。


「残念ながら、私達夫婦に子供はいません。だから、私達夫婦はお母様の気持ちを100%理解など出来ません。ただ、一つだけ言えるとしたら、夫婦は一人でなるものでしょうか?」


凛の言葉にまっつんのお母さんは、黙ってしまった。


「偉そうな事を言ってすみません」


まっつんのお母さんは、「はぁー」とため息をついた。


「優太に会うなって言いたいんでしょ?」


「そんな事、言ってません」


「わかってるのよ!私だって」


まっつんのお母さんは、そう言いながら珈琲に砂糖を入れてる。

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