お願いします(凛の話)

結婚式、披露宴は、無事に終わった。

私と龍ちゃんは、理沙ちゃん達の控え室、近くに来ていた。


「凛ちゃん、龍次郎さん」


「凛さん、龍次郎さん」


まっつんさんと理沙ちゃんは、二人で並んでいる。


『書いて下さい。お願いします』


そう言って、私と龍ちゃんに婚姻届を渡してくる。


『はい』


私と龍ちゃんは、一緒に婚姻届を受け取った。


「明日、私達が凛ちゃん達の家に取りに行くから!」


「わかった」


「じゃあ、着替えるから」


「うん」


私と龍ちゃんは、ニコニコと笑いながら二人を見送った。


「よかったな」


「うん」


まっつんさんの保証人の欄と理沙ちゃんの保証人の欄が、一人分ずつ空白だった。


「懐かしいなーー。俺達も、書いてもらったよな」


「龍ちゃんのお父さんが震えすぎて失敗しちゃったよね」


「そうそう。書き直して!そしたら、次は凛のお父さんが印鑑ここに押してな」


「そうそう。何枚無駄にしたかなーー」


私と龍ちゃんは、ニコニコ笑って話していた。私が、預かった婚姻届を鞄にしまおうとした時だった。


「勝手にサインするなーー」


その人は、凄い剣幕で怒っている。私は、婚姻届を取られないように必死だった。


拓夢もやってきた。


私達は、四人で話し合いをする事になった。


「優太に会うなって言いたいんでしょ?」その言葉に、私は胸の奥がチクりと痛んだ。


私は、言ってない事を伝えた。


「あっそ」


まっつんさんのお母さんは、そう私に言ってから溜め息混じりに話し出した。


「あの子は、普通の家庭で育ったあの女の子みたいな子と何かいれないのよ」


「どうしてですか?」


「惨めになるのよ。一緒にいたら……。人間は、そう出来てる」


まっつんさんのお母さんは、コーヒーを飲みながら悲しい表情をしている。


「それは、違いますよ!まっつんは、理沙ちゃんと居て幸せですよ」


拓夢が、そう言ったけどまっつんさんのお母さんは、首を横に振った。


「そうやって思えるのは、恋人同士の時だけよ。拓夢君、結婚って家との繋がりをもつのよ」


まっつんさんのお母さんは、そう言って拓夢を見つめている。


「確かに、互いの家族を知ってしまうと羨ましさや惨めさを感じる気持ちが沸き上がってきますよね。恋人同士とは、違って……。それをダイレクトに感じるんですよね」


龍ちゃんは、そう言ってまっつんさんのお母さんを見ていた。


「だから、あの子には結婚は無理なのよ!」


まっつんさんのお母さんが、そう言った言葉に龍ちゃんは首を横に振った。


「だからって、何も始まっていないのに、無理だと決めつけるのは違うと思いますよ」


龍ちゃんの穏やかで優しい声が響いてる。





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