母親の勘(拓夢の話)

まっつんと理沙ちゃんの挙式が終わった俺は、母さんに呼ばれていた。


「きれかったわねーー。あの人は、参列しなかったの?」


「ああ。反対してるって」


「そうなんだね。仕方ないよね……。親子って言っても色々あるからね」


そう言いながら、母さんは遠くを見つめている。


「ねぇーー。拓夢」


「何?」


「あんた、あの人が好きなんでしょ?」


そう言って、母さんが目で合図した場所に凛と龍次郎さんがいた。


「何言ってんだよ」


俺は、母さんに怒った。


「綺麗な人だもんね。本気で愛したんだね」


「だから、何言ってんだって言ってんの」


母さんは、俺の言葉に俺をジッーと見つめた。


「不倫は、よくないのわかったから頑張って終わらせたんでしょ?偉かったね!拓夢」


そう言って、頭を撫でてくる。


「やめろよ。子供じゃないんだから」


「なーに言ってんのよ!あんたは、私の子供!いくつになったって、あんたが私の年齢を追い越せる事はないのよ!知能や身長が追い越せたって、年齢が追い越せない時点であんたは、私の子供よ」


「何言ってんだよ!母さん」


母さんが話す持論を聞きながら、俺は少し笑ってしまった。


「人を本気で愛せたならいいんじゃない。不倫でも……。母さんは、そう思う。それに、あんたが愛したって事は、あの人はあんたの欠けを埋めてくれたんでしょ?」


そう言って、母さんは笑ってる。


「最低だろ?俺」


俺は、母さんにそう言っていた。


「さあね!他所さんが何て言おうと母さんは拓夢を最低だとは思わないよ。それに、あの人の旦那さんは許してる。あんたとあの人の事……。心底許してる」


「何で言いきれるんだよ」


母さんは、俺の言葉にくしゃっと笑った。


「だって、旦那さんが纏ってる雰囲気も、拓夢を見る眼差しも、みんなみんな優しかったよ」


「そんなのいつ見てたの?」


俺の言葉に母さんは、フフフと笑った。


「意識してなくてもしてるのよ。それは、拓夢も同じ事。だから、気にかける。その眼差しに悪意があるかどうかなんて……。私は、あんたの母親だから分かるに決まってるでしょ!どんだけ見てきたと思ってんのよ!オムツだって変えたのよ。あんたの体のどこにホクロがあるかも知ってるわ」


そう言って、母さんは俺の背中を叩いた。


「痛いなーー」


「我慢しなさい!」


そう言って笑ったあとで母さんは俺にこう言った。


「拓夢が傷つかないように不幸にならないようにって、この両手に大事に抱えて生きてきたけど……。拓夢は、もう私の手から離れて立派に歩きだしたんだね。自分についた傷を一緒に治せる相手を自分で見つけられたんだね。立派になったね。拓夢」


母さんは、何故か涙を流し始めていた。


「何かね、他のみんなもだけど……。大人になってくれて嬉しい反面、寂しいね」


そう言いながら、涙をハンカチで拭い始めた。


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