まっつんとの時間【拓夢】
俺は、まっつんに何も話が出来ないままだった。
「
「うん」
「ついてすぐに言った言葉がさ」
「うん」
「あの女は、やめなさいだってさ…」
「何で?」
「これからのSNOWROSEの為にならないからだって言うんだよ。笑わせるよな」
そう言いながら、まっつんは泣いていた。
「12月にしたのって」
俺は、その言葉にまっつんに聞いていた。
「あの人が、俺を捨てた月だったから…」
「まっつん、許すつもりだったんだな」
まっつんは、泣きながら俺を見つめる。
「凛さんの旦那さんの龍次郎さんが、拓夢を許しただろ?あの日…」
「クリスマスの日だよな」
「そう。その時に、俺も許さなくちゃって思ったんだよ。許すってより、産んでくれた事に感謝しようって思ったんだ」
そう言いながら、まっつんは涙を拭っていた。
「龍次郎さんが言ったみたいに…。許すとか許さないとかじゃなくて感謝しようって…。
「まっつん……」
俺は、まっつんに近づいた。
まっつんは、生まれ変わりたかったんだ。
結婚して夫になるからこそ生まれ変わりたかったんだ。
「
「うん」
「この身体中に
「まっつん…」
確かに、昔聞いた事があった。虐待された人間は、自分もまた虐待をするようになり、親に捨てられた人間は、自分も子供を捨てる。人生は、繰り返される。暴力を振るわれた人間は、自分もまた暴力を振るう人間に…。
だから、どこかで止めなくちゃいけないんだ。まっつんは、母親から受け継いだ遺伝子の悪い部分を今日止めようとしたんだ。
「拓夢、俺は変わりたかっただけなんだと思う。そして、何よりおめでとうって言ってもらえたら救われたんだと思う」
「そうだよな…。だって、まっつんがこうやって生きてるのはおばさんがいたからだもんな」
「そうだよ」
どんなに酷い人間であっても、命をかけて産んでくれた母親なんだ。その瞬間は、きっとまっつんの母親はまっつんを愛していたんだよ。ただ、どこかでボタンがかけ違ってしまっただけで…。それをまっつんは、俺なんかよりちゃんとわかってる。
「もう、やだわ!ここじゃないの」
「あら、本当」
俺とまっつんは、突然聞こえた声に顔を上げた。
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