理沙ちゃん【凛】

「変わらない人間なんていないよ」


そう言って、龍ちゃんは私の手を握りしめてくれる。


「龍ちゃん、ありがとう」


「うん」


電車は、最寄の駅について扉が開いた。


「行こう」


「うん」


私は、龍ちゃんの手を引っ張って歩き出す。


改札口を抜けるとベビーカーを押した家族連れとすれ違った。


やっぱり、まだ…。


「凛、これあげようか?」


龍ちゃんは、私にそう言った。


「何?」


「こんなの入ってた」


「これ食べれるの?」


龍ちゃんが手に持っていた飴から視線をはずすとさっきのベビーカーを押した家族はいなかった。


「これ、いつのかな?鞄にあったから、わからないよなー」


「わざとだよね?」


私は、龍ちゃんを見つめてそう言った。


「私の事、考えてわざとだよね?」


「飴は、電車の中で見つけてたよ」


龍ちゃんは、そう言いながら歩き出した。


「龍ちゃん」


「見たくないものは、見なくていいんじゃないか?」


私は、龍ちゃんの言葉に泣きそうになった。


「見たくないものを何でわざわざ見るんだよ!見れるようになったら見ればいいだけだろ?」


「龍ちゃん…」


「凛に、その事を教えてくれたんだろ?みんなが…」


そう言って、龍ちゃんが止まった。目の前には、教会が佇んでいる。


「凛の大好きな理沙ちゃんに会いに行ってきなよ」


「龍ちゃん」


「泣くのは、まだだろ?」


龍ちゃんは、そう言って笑ってくれる。


「皆月さん、おはようございます」


相沢さんが、手を振って私達に近づいてきた。


「おはようございます」


「凛、行ってきな」


私は、龍ちゃんの言葉に頭を下げてから走り出した。


コンコンー


「はい」


「失礼します」


「凛ちゃん」


受付の人に尋ねて、私は理沙ちゃんの元に来ていた。


「おめでとう、理沙ちゃん」


まだ、始まってないのに私は泣いていた。


「まだ、早いよ。凛ちゃん」


理沙ちゃんも、泣き出してしまった。


「ごめんね。よかったって思ったら、何か泣いちゃって…」


「ううん。私も、凛ちゃんの顔見たら安心しちゃった」


そう言って、理沙ちゃんはまた泣いてしまった。


「本当によかったね。まっつんさんと結婚出来て…」


「うん、ありがとう。あっ、優太がね」


「うん」


「後で、凛ちゃんと龍次郎さんに書いて欲しいって言ってたんだ」


「保証人?」


「うん。籍は、私と優太、12月12日にいれるから…」


「わかった」


私は、理沙ちゃんに頷いていた。


「優太のお母さんは、書いてくれないって言ったみたいでね。元々、凛ちゃんと龍次郎さんには頼むつもりだったからね」


「お母さん反対してるの?」


「どうやら、そうみたい。かねやんから、メッセージきたから」


「そうなんだね…。こんなに可愛いのに」


私は、理沙ちゃんの手を握りしめる。白い薔薇のネイルが施された指先が凄くキレイだった。



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