現れたのは…【拓夢】

「やだー。もう」


「ほんとにねー」


俺とまっつんは、顔を見合わせていた。


「優太君、もう泣いてるの?イケメンが台無しよ」


「来るなら言えよ」


「あら、拓夢!来てたの」


まっつんは、お腹を抱えて笑い出した。


「呼んだのか?」


「いや、呼んでない」


「えっ?何でいんの?」


「誰だっけ…」


「もう、星村さん。相沢さん」


「あー、そうそう相沢さん」


おばさん三人組がやって来たのだ。


「もう、やーね。金田さん」


「ほんとよ、ほんと」


母としゅんの母とかねやんの母が、まっつんに近づいてきた。


「挙式なら、見れるって言うからね!優太君。いいなさいよー。水くさいんだから…」


「はい」


まっつんは、おば様達に囲まれて笑っている。


「息子みたいに思ってるんだよ!私達三人は、優太君の事」


「そうよそうよ」


そう言いながら、三人は頷いている。


「招待状なかったら、寂しいじゃないのよー」


母は、まっつんの肩を叩いていた。


「すみません」


「言いんだけどねー」


三人は、ニコニコ笑ってまっつんを見つめる。


「でも、嬉しいわ」


「ほんとね」


「誰かを幸せに出来るような男になったのねー」


「ほんとに」


「結婚ってするのは簡単だけど続けるのが大変なのよー」


「思い通りにならない日の方が多いわよ」


「それでも、幸せにしたい人が出来たのね。立派よ」


「ほんとに鼻高々だわ」


三人は、代わる代わる喋っている。


まっつんは、三人のおば様の言葉が嬉しくて泣いていた。


「どんな人間でも結婚は出来るのよ!だけどね、苦しい時、悲しい時、病気の時、大抵の人は、そこを乗り越える事が出来ないのよ」


「そうそう。人生はいい時ばかりじゃないのよ。悪い時の方が多いのよ」


「愛してるや好きだけじゃ埋まらない事も出てくるのよ」


「それでも、耐えるのよ」


「結婚は、耐えるのよ」


「忍耐よ、忍耐」


おば様達は、そう言いながらまっつんにガッツポーズをしている。


「みんなね、履き違えてるから不幸せになるのよ」


「わかるわー」


「結婚は、幸せになる為の切符じゃないのにねー」


「そうそう」


「結婚は、一人で生きていけない人間がするものよ」


「あらー。金田さん極論ね」


「弱い人間が強くなる為の鎧かしらね」


「あら、瀬戸さん。面白い事言うわね」


三人は、楽しそうにまっつんの前で好き勝手な事を言っている。


「幸せにするとかなるとか考えすぎなくていいんじゃない。ただ、そこに気づいたらあるんだから」


「そうね、星村さんの言う通りよ」


「あんまり、気負いしちゃ駄目よ。優太君」


苦楽を共に過ごしてきたおば様達の考えは、俺も少し面白くて…。


前よりも、凛の事をわかる気がした。


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