結婚式に向かう【凛】
12月1日を迎えていた。
「龍ちゃん、ネクタイ」
「ありがとう」
「カフスとネクタイピンちゃんとつけなきゃ駄目だよ」
「わかった」
私は、龍ちゃんにそう言って笑った。
「この年になったら、結婚式より、お葬式が増えただろ?何か、新鮮だな!こうやって、凛と結婚式の準備するの」
そう言いながら、龍ちゃんはカフスボタンをはめている。
「確かに、そうよね!嬉しいね」
私は、龍ちゃんに笑いかける。
「あの日から、凛が笑顔になって俺も嬉しいよ!」
「あの日?」
「ああ!二人の為に、協力したいって言って、全部終わった後から…」
龍ちゃんは、そう言いながらネクタイを締めていた。
「不思議ともう絶望しないの。もっと早く消せたら、拓夢とこうはならなかったよね」
ネクタイピンをつけて、龍ちゃんは私の肩を優しく叩いた。
「必要な出会いだったんだから…。気にしちゃ駄目だって。世間が何て言ったって、俺が許すから」
そう言って、私の真珠のネックレスをつけてくれる。
「龍ちゃん、ありがとう」
私は、龍ちゃんに笑いかける。
「いいんだよ」
そう言って、龍ちゃんは頭を優しく撫でてくれた。
「もうすぐ出なきゃ!」
私は、お揃いの腕時計で時間を見て言った。
「急がなきゃだな」
龍ちゃんは、そう言ってジャケットを羽織った。私は、イヤリングをつける。
コートを羽織って家を出ると龍ちゃんは、鍵を閉める。
「行こうか」
「うん」
龍ちゃんは、手を握りしめてくれる。
「電車でよかったのか?」
「その方が、龍ちゃんもお酒飲めるでしょ?」
「確かに、そうだよな!でも、帰りはタクシーにしようか」
「そうだね」
龍ちゃんとこんな風に歩いてるのが私は楽しい。
「星村さんと話しなよ」
「あっ、うん」
「せっかくだから、ゆっくり話した方がいいよ!めったに会えないんだから…」
「そうだね」
龍ちゃんにそう言われて私は頷いていた。
「あのね、龍ちゃん」
「何?」
「私、ずっと龍ちゃんの優しさに甘えてばかりだよね」
「急にどうした?申し訳なく思った?」
私は、龍ちゃんの言葉に首を縦に振った。
「いいんじゃないか?優しくされる間は、優しくされちゃって…」
「龍ちゃん」
「もしかしたら、気が変わって!俺、明日から凛に優しくなくなるかも知れないだろ?」
「そんな日ないでしょ?」
私は、龍ちゃんを見つめて笑った。
「そんなのわからないだろ?俺自身もわからないんだから。凛には、もっとわからないよ」
「そうだよね…。龍ちゃんがわからない事、私にはわからないよね」
「ごめん、ごめん。そんなに落ち込んだ顔しないって!」
そう言って、龍ちゃんはニコニコ笑ってくれる。
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