別れじゃないよ【凛と拓夢の話4】
凛は、俺の言葉に切なそうな顔をみせる。
「凛、別れじゃないよ」
「じゃあ、何?」
「これは、新しい始まりなんだよ」
俺は、頬にある凛の手を握りしめる。
「新しい始まり?」
凛は、そう言って泣いている。俺は、ハンカチで凛の涙をまた拭う。
「俺と凛は、友達になるんだよ!それも、普通の友達じゃないんだ。特別な友達だ」
「特別な友達?」
「そうだよ!俺と凛なら、そうなれる気がしないか?」
互いの絶望を拭い合い、互いの体を隅々まで知り尽くし、剥き出しの心をぶつけ合った。そして、愛し合った。だから、きっと…。俺達なら、特別な友達になれる気がした。
♡♡♡♡♡
拓夢に特別な友達になれると言われた。本当は、半信半疑だけど…
そうなれるかはわからなくても、そうなりたいと思っていた。
「なってみたい」
私は、拓夢にそう言って笑った。
「俺達なら、きっとなれるから」
拓夢にそう言われて、私は、頷いていた。
「これからは、凛は幸せしかないよ!」
拓夢は、そう言って私の頬を優しく撫でてくれる。気づけば、辺りは真っ暗だった。
「見て、凛。星、綺麗だなー」
拓夢にそう言われて、私も海辺を見つめる。
「本当だね」
拓夢は、海辺の方に体ごと向ける。
「凛」
「何?」
「旦那さんとは、順調?」
「元通りってわけじゃないかも知れないけど…。順調だと思う」
「それなら、よかった」
拓夢は、そう言って笑ってくれてるのがわかる。
「あの日々を後悔してないから…」
私は、拓夢の横顔を見つめながら言った。
「何?急に…」
「伝えたいと思っただけだよ」
私は、恥ずかしくて星を見つめていた。
♡♡♡♡♡♡
凛が、俺と過ごした日々を後悔していないと言ってくれただけで俺は、凄く幸せな気持ちになっていた。
「別れるのも運命だって思うだけで、心が軽くなってた。だけど、相沢さんの言葉を聞いて…。運命は、作るだって忘れてた。だから、俺。凛との運命を作りたいと思ったんだ」
俺は、そう言って凛を見つめる。暗いけれど、凛の顔はハッキリと月明かりで見えていた。
「どんな運命を作りたいと思ったの?」
「結婚とか恋人とかそういうのは無理だってわかってるから…。だから、俺、特別な友達になりたいと思った。どんな形でも、凛の傍にいれる運命が欲しいと思ったんだ」
凛は、俺の言葉に手を握りしめてくれる。
「拓夢、あの日、抱かれなかったのは…」
「言わないで、凛」
「拓夢」
「凛の絶望に俺は、寄り添ってはやれないから…」
俺は、そう言って凛に笑いかけた。その絶望を拭えなかった時、俺を嫌いになっていたのはわかる。俺に失望したくなかったんだよな。
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