また、会おう【凛と拓夢の話5】
拓夢に伝えようとして止められた。きっと、私が言いたい言葉をわかっていたんだと思った。
「私も拓夢を失いたくなかった」
失望したくなかったのは、拓夢を失いたくなかったから…。嫌いになどなりたくなかった。出会えたのに、愛し合ったのに、絶望を拭ってもらえたのに…。
「凛、これからは違う形で関わっていきたい」
「うん」
「ハグは、ありかな?」
「ありでしょ?」
拓夢が開いた両手に私は、抱きついた。
「凛、幸せになって。今よりもっと…。俺が、悔しがるぐらい」
「わかった。拓夢もね」
拓夢の言葉に私は、そう言った。
「わかってる」
拓夢もそう言ってくれた。
「凛をずっと愛してる。さっきの歌みたいに、俺は…」
「私も、さっきの歌みたいに生きてくから」
「お互いに…」
「うん」
私と拓夢が、あんな風に抱き合う事はもう二度とない。
あの時は、互いの絶望を、悲しみを、苦しみを、拭い合えた人。
でも、もうそれは過去の事で…。
今、私達は特別な友達になろうとしていた。
「いつでも、連絡してきて!返事を返せる時はする」
拓夢は、私から離れてそう言って笑ってくれる。
「わかった」
「じゃあ、握手する?」
「そうだね」
差し出された右手に右手を重ねて握手をした。
「帰らなきゃ!旦那さんが心配する」
「うん」
私と拓夢は、立ち上がった。
♡♡♡♡♡
凛に失いたくなかったと言われて、俺は全て理解した。
やっぱり、あの最後の日々の凛の絶望は拭えなかったんだと…。
そして、今の凛に必要なのは寄り添ってくれる愛なんだと…。
それは、俺には出来なかった。勝ち負けがあるのなら、完全なる敗北だ。
俺と凛は、服についた砂を払った。
「月坂梨花のニュースみたよ」
「うん」
「凄いね!よかったね」
「そうだな!あの人のお陰で、まっつんが結婚出来るから」
「そうだよね」
俺は、そう言って凛を見つめていた。
「結婚式には、呼んでもらえるかな?」
「当たり前だろ?凛は、理沙ちゃんの友達なんだから!」
「それなら、嬉しい」
砂を払い終わった俺達は、笑い合っていた。
「次に会うのは結婚式だな」
「そうなるね」
「その時に、またこうやって話さないか?」
「うん、わかった」
「約束」
俺は、右手の小指を凛に差し出した。
「約束」
指切りを交わした。
「帰ろう」
ちょうど、理沙ちゃんとまっつんがやってきた。
「行こう、凛」
「うん」
俺と凛の短い不純異性行為は、本当の終わりを告げた。
「じゃあ、送るよ!凛さんと理沙ちゃんは、家まで送る?」
「駅まででいいです」
待っていた相沢さんに、理沙ちゃんはそう言った。
「じゃあ、駅まで送るよ」
三人は、スッキリした顔をしていた。きっと、俺もそうだ。車に乗り込み、相沢さんが車を出して駅に着いた。
「じゃあ、また」
「また、SNOWROSEのPV
撮影に女の子を使う時はよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
凛と理沙ちゃんは、相沢さんにそう言って笑っていた。
「バイバイ」
「気をつけて」
俺とまっつんは、二人に手を振った。二人は、車から降りて行った。
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