新しい未来へ【凛と拓夢の話3】

俺は、凛にスマホを差し出された。


「凛……?」


「私、勇気ないから消して」


そう言って、凛はSNSのアイコンを押した。


「消していいのか?」


凛は、ゆっくりと首を縦に振った。


「わかった」


俺は、凛のSNSを削除する為に操作する。


「パスワードは?」


「これ」


「じゃあ、削除するよ」


「うん」


俺は、削除ボタンを押した。


「後、さっきの…」


「おめでとうって、俺が送ってやるよ!それで、削除だな」


「うん」


俺は、おめでとうと文章を作った。


「これでいいか?」


「うん」


凛に聞いてから、送信した。すぐにスタンプが届いた。


「消すよ」


「うん」


俺は、雪乃を削除した。


「番号は?」


「これ」


凛が教えてくれる人を全員削除した。


「終わったよ」


「ありがとう」


俺は、凛にスマホを返した。


「もっと、スッキリすると思ったけど…。やっぱり、悲しいんだね」


凛は、そう言って泣いていた。俺は、反射的に凛を抱き締める。


「そうだよな…。何十年も友達だったもんな」


「あー、ああー」


凛は、子供みたいに泣き出した。


「辛いよな。悲しいよな」


「うん…」


わかってるけど、こうしなくちゃ…。凛は、これからもっと絶望が降り積もっていくだけなんだ。


♡♡♡♡♡♡


拓夢に全てを消してもらった。もっと、スッキリすると思っていたのに…。何故だかかなしくて、胸がチクチクと痛んだ。友人を消す事は、あの頃の自分を否定する行為だと知った。私は、泣いていた。拓夢は、私を優しく抱き締めてくれる。

背中を擦ってくれるから、拓夢にしがみついていた。


削除出来なかった理由が初めてわかった。私が、雪乃達と友達関係を続けてきたのは…。

あの頃の自分を否定したくなかっただけに過ぎなかったんだ。


「拓夢、私。あの頃の自分を否定したみたいに思ってる」


私の言葉に拓夢は、「消さない方がよかったか?」と言った。


「ううん。違うの…。ずっと、消せなかったのはあの頃の自分が選んだ道が間違いだって言うのが嫌で、消せなかっただけだったって気づいたんだ。否定したくなかっただけ…」


私の言葉に拓夢は、「あの頃の凛の選択が間違ってるはずないんだよ」と言ってくれる。


「拓夢……」


「大人になって、変わったんだよ。それだけだよ。今の凛には、その人達は必要なくなっただけだよ」


拓夢の言葉に否定ではなく大人になったのだと思えた。


拓夢は、私から離れた。


「凛の幸せの為に、必要なくなっただけだよ」


そう言って、私の涙を拭ってくれる。


「凛、これからは、新しい未来に進むんだよ!絶望をすぐに感じる必要はないんだよ」


「拓夢……」


「旦那さんと幸せになるんだよ」


そう言って、拓夢は頭を優しく撫でてくれる。


「お別れみたいな言い方しないで」


私は、拓夢の頬に手を当てていた。


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