お疲れ様【拓夢】

「お疲れ様」


「お疲れさまでした」


「星村君家の引っ越しも無事にすんだよ」


「ご迷惑おかけしまさした」


「いや、いや」


管理人さんから、昼御飯の時に連絡がきて話をしたから…。引越し屋さんは、時間通りにやってきたのがわかった。


「相沢さんがいなかったら、大変でしたよ」


「いつでも言ってくれていいんだよ!遠慮はしないで」


相沢さんは、そう言って笑ってくれた。まっつんは、ずっと俯いて黙ったままだった。


「じゃあ、今日は三人でご飯でも行こう」


相沢さんの言葉にまっつんは、コクンと頷いていた。


「タクシーで行こうかなー。俺も飲みたいからね」


そう言って、相沢さんはタクシーに連絡をしていた。俺は、まっつんに何の言葉もかけられなかった。タクシーが来るまでの間、相沢さんは俺達をどう見せていくかを一人で話してくれていた。お陰で空気は重くなかった。


「さあ、来たよ」


タクシーがやってきて、相沢さんは【花幻(はなげん)】行ってくれと頼んだ。暫くして、【花幻】についた。

俺達は、タクシーを降りる。


「こんばんは」


「相沢、いらっしゃい」


そう店主が言った後で、店員さんがやってきた。案内されたのは、個室だった。


「ご注文は?」


「生ビール3つとおまかせで」


「かしこまりました」


相沢さんの言葉に店員さんは頭を下げていなくなった。


「おしゃれですね」


「創作居酒屋ってやつだよ!って、下にいたのは俺の元バンドメンバーだけどね」


その言葉に、まっつんが驚いた声を出した。


「相沢さん、バンドしてたんですか?」


相沢さんは、「言ってなかったっけ?」と言いながら頭を掻いていた。


「お待たせしました」


小鉢に入れられたつきだしが3つと生ビールがやってきた。


「ありがとう」


「はい、失礼します」


店員さんは、そう言っていなくなった。


「お疲れさま、乾杯」


相沢さんの掛け声に『乾杯』と言ってジョッキをぶつけた。


「ここのポテサラうまいから食べてみて」


つきだしを指差して相沢さんが笑った。


『いただきます』


俺とまっつんは、そう言ってポテトサラダを食べた。


『うまっ』


二人で同時に声を出していた。


「だろう?」


そう言って、相沢さんは嬉しそうに笑っていた。


「色々思う事は、松田君も星村君もあるだろうけど…。俺が何とかするからさ!二人は、目の前の事を全力で頑張ってよ」


相沢さんは、そう言って笑ってくれる。相沢さんの何とかするは、ほんとうに何とかなる。だから、俺は信じられた。


「相沢さん、理沙と結婚したいです」


まっつんは、そう言ってビールをゴクリと飲んだ。


「わかってる。もう少しだけ待って欲しい」


相沢さんは、まっつんにそう言った。


「わかりました」


まっつんは、涙を拭って頷いた。


それからは、相沢さんの色んな話を聞いて食事会は終わった。


ご飯を食べ終えると俺達は相沢さんと別れてタクシーに乗って、家に帰った。


「じゃあな、拓夢」


「おやすみ、まっつん」


隣同士の俺達は、そう言ってから部屋に入った。

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