新しい未来へ~互いを救ってくれた愛と共に…。~【凛と拓夢の話3】
久しぶりの再会【凛】
「いってらっしゃい」
「行ってきます」
いつもの日常が始まって、龍ちゃんは仕事に行った。
私は、食器を洗ったり、掃除機をかけたり…。洗濯が終わるといつものように箱庭に出て洗濯を干した。
「うーん。これがいいんだよ」
近所の洗濯物が目に入った。小さな子供の洋服が揺れていた。
もう二度とあちらへは行けない。私は、洗濯かごを持って家に入った。
ブー、ブー
スマホのバイブ音が聞こえていた。
「もしもし」
『凛ちゃん、会える?』
「家に来る?」
『うん、じゃあ!行くね』
「わかった」
久しぶりの理沙ちゃんからの連絡だった。私は、洗濯かごを直しにいく。
ピンポーン。
「はーい」
『来たよ』
理沙ちゃんは、電話を切って15分後にやって来た。
「はーい」
ガチャ…。
「久しぶりだね」
「どうぞ」
「お邪魔します」
私は、理沙ちゃんを上げた。玄関の鍵をかけて、リビングにやって来た。
「凛ちゃん、ケーキ買ってきた」
「ありがとう。ごめんね。気を遣わせちゃって」
「ううん」
私は、理沙ちゃんからケーキの箱を受け取った。
「紅茶いれようか?」
「うん」
「そこに座ってて」
「わかった」
理沙ちゃんにダイニングに座ってもらって私は、キッチンに行く。
ケトルでお湯を沸かして、紅茶の準備をする。好きな物を我慢しなくていい。冷えたらとか気にしなくていい。お砂糖は、身体に悪いとか、ミルクは控えなくちゃとか…。そんな事を考える必要もない。
ケトルがカチッと音を立てて、紅茶のポットにお湯を注いだ。ケーキ皿に理沙ちゃんがくれたケーキを入れる。フルーツケーキだった。キラキラと宝石みたいに輝いたケーキ。
私は、冷蔵庫から取り出した牛乳をミルクをいれる容器に注いだ。
紅茶セットとケーキ皿とカトラリーをトレーにのせて運ぶ。
「お待たせ」
「ううん」
私は、理沙ちゃんの前にケーキ皿を置いた。
「美味しそうなケーキだね。楽しみ」
「よかった。凛ちゃんが元気そうで」
理沙ちゃんは、そう言って私を見つめた。
「元気だと思うよ」
紅茶のポットから、カップに紅茶を注ぎながら私は話していた。
「龍次郎さんを選んだんだね」
理沙ちゃんは、そう言って私に微笑んだ。
「ちゃんとお別れしたから…」
私は、理沙ちゃんに紅茶を入れたカップを差し出した。
「たくむんとは、終わっちゃったの?」
「終わったのかな?気持ちだけは、まだ
私は、そう言ってダイニングの椅子を引いて腰かけた。
「凛ちゃん…。それでいいんじゃない?」
理沙ちゃんは、そう言ってくれた。
「お砂糖とミルク使ってね」
「うん、ありがとう」
「理沙ちゃん、私ね。拓夢との最後の日々で抱かれなかったの」
私は、理沙ちゃんにそう言いながら目を伏せた。
「失望したくなかったの?」
理沙ちゃんは、私の言葉にすぐにそう言ってくれた。
「わかる?」
「わかるよ!この絶望を拭えなかった時どうしようって思ったんだよね」
「そうなの…」
「もう、次は探したくなかったんでしょ?」
理沙ちゃんは、お砂糖とミルクをいれながら私にそう言った。
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