恋人同士みたいな時間【拓夢】

「はい、珈琲」


「ありがとう」


俺が、珈琲を渡すと凛はトレーに食器をのせる手を止めて受け取った。


「今日は、何しようかな?下着買いに行って!スーパーに行こうか!食材買いに…」


「うん、味噌汁の具がないもんね」


「そうだな」


「でも、拓夢。大丈夫?」


「大丈夫だよ」


心配する凛に、俺は笑った。


「それなら、いいんだけど…」


「うん」


俺達は、珈琲を飲んだ。


「凛の服ないから、俺のでいい?」


「うん」


「後、引っ越しの手伝い一緒にしてくれない?」


「いいよ」


凛が笑うだけで、俺はもう充分だった。凛は、トレーに食器をのせてキッチンに下げにいく。


「待って、お皿一緒に洗う」


決まり事みたいにお皿を洗ってから、俺と凛は服を着替えて部屋を出た。


「帽子を深く被らなくちゃいれなくなっちゃったな」


俺は、そう言って苦笑いを浮かべた。


「手は繋げないよ!もう、駄目だよ」


凛の言葉に、俺はうんと頷いた。タクシーは、使いたくなかったけど…。駅前で、タクシーに乗って五駅先の服屋さんに行った。


「VIPみたい」


「そうだな」


二人でニコニコ笑いながら、凛が下着を買ったり、ここにいる為の服やパジャマを選んでいた。


「お金は、俺が出すから…」


そう言ってお会計をして、そのまま近くのスーパーに行く。


「豆腐とうすあげとしいたけとレタスも買って…」


かごを持った俺にそう言いながら凛はかごにいれてく。まるで、新婚みたいで楽しい。


「たまごも追加しとこう」


「だな」


俺は、凛に笑った。

スーパーで、レジを済ませて袋に入れる。また、駅前でタクシーに乗って帰宅した。


「何か疲れたなー」


玄関を開けて、家に入った瞬間に俺はそう言った。


「仕方ないよ!顔が指すんだから…」


「だよな」


俺と凛は、そう話しながら靴を脱いで上がる。


リビングにつくと凛は、スーパーの袋を俺から取ってキッチンの冷蔵庫に食材をしまっていく。


ピンポーンー


「誰?」


「多分、引っ越し業者」


俺は、服の袋を置いて玄関に行く。


「はい」


「星村さんですね。段ボール持ってきました」


「ありがとうございます」


俺が、段ボールを受け取った時だった。


「あ、ああー。ああー」


「何ですか?」


「SNOWROSEのタクムですよね」


ヤバい、バレた。


「あ、まあ…」


「俺、めちゃくちゃファンなんです。サインとか無理ですよね?」


「引っ越しの日でいいなら、用意しときます」


「本当ですか?ありがとうございます」


そう言って、深々と頭を下げられた。


「内緒にしますから!ここにタクムがいるって」


そう言って、引っ越し業者のお兄さんはいなくなった。俺は、段ボールをいれて玄関の鍵を閉めた。


「すごいね」


凛がやってきて、段ボールを持ってくれる。


「たまたまだよ」


「でも、すごいよ」


そう言って、凛がニコニコ笑ってくれるから俺も嬉しくて笑った。

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