醜い自分が…【凛】

拓夢は、胸を触ってくれない。ただ、胸の上に手が置かれてるだけだった。


「こうやってしてよ。いつも、みたいに絶望を拭ってよ」


私の言葉に拓夢は、泣いている。泣きながら、首を振った。


「どうして?」


「もう、体の関係じゃ凛の絶望を拭ってやれないだろ?」


その言葉に私は苛立つ。


「じゃあ、いい。違う人を探すから」


その言葉に拓夢は、私を引き寄せて抱き締めてくる。


「旦那さん以外に、抱かれないでよ。凛」


「じゃあ、拓夢が抱いて…」


「それは、出来ない」


「だったら、もういい」


離れようとする私を拓夢は、力を少し込めて抱き締めてくる。


「離して、抱いてくれないならいらない」


暴れようとする私の耳元で拓夢は言った。


「何が許せないの?」


その言葉に、私は子供みたいに泣いてしまう。


「ああー、ああー」そう言って、拓夢にしがみついた。


「大丈夫だよ!大丈夫」


拓夢は、私の背中を優しく撫でてくれる。


「雪乃が、和紗の投稿を載せてて。今日、和紗に赤ちゃんが産まれたの。それで、雪乃と和紗がコメントしあってて私は入れなくて。でも、そんな事じゃなくて…。おめでとうって思えなかった。和紗が大好きなのにおめでとうって思えなかったの」


拓夢は、私の頭を優しく撫でてくれる。


「私、醜い。こんな醜い心を持ってるなら。死ななきゃ直らないよ。だから、もういなくなりたい」


拓夢は、私の背中を優しく撫でながら「大丈夫」を繰り返してくれる。


「拓夢、私。駄目な人間でしょ?醜くて、汚くて…。最低でしょ?」


「そんな事ない」


「嘘よ」


私の言葉に拓夢は、私の頭から背中にかけて優しく撫で続ける。


「凛、あっていいんだよ。その気持ち、持っていたっていいんだよ。いつかきっと、おめでとうって言える日がくるよ。大丈夫だから…。そんなに自分を責めなくていいんだ」


拓夢は、そう言って私の腰を引き寄せるように抱き締めてくれる。


「そんな風に言わないでよ。いつかなんかこないじゃない。私、和紗にもおめでとうって思えなかった」


「くるよ、必ず。今は、まだそう思えなくても…」


拓夢は、そう言って私の背中を撫で続けてくれて、私は子供みたいに声を出して泣いてしまった。


「ああー、ああー」


拓夢は、何も言わずにただただ、私の髪や背中を撫でてくれていた。


「のぼせるから、あがろうか?」


私が泣き終わったタイミングで、拓夢は言った。


「うん」


拓夢は、私から離れて涙で、ぐちゃぐちゃな頬を撫でてくれる。


「一人で洗える?」


「子供じゃないから、出来るよ」


「わかった。じゃあ、凛が洗い終わるの待ってる」


「もう、洗いあいはしないんだね」


私の言葉に拓夢は、ニコニコと笑ってから頭を撫でてくれる。


「しないよ。俺達は、もうそういうのはしない」


「でも、キスはしてくれるんでしょ?」


「それは、一緒に過ごす間だけだよ」


「じゃあ、洗うね」


拓夢にそう言ってから、私はシャワーを捻った。絶望を拭うだけの体の関係を、拓夢は本当にやめるんだ。

そう思いながら、体や髪を洗っていた。


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