夢を叶えるって…【凛】

拓夢の言葉を聞いて、これから先、拓夢は変わっていってしまう気がした。変わらない人なんているわけないよね。でも、そんな自分がやってくるのが怖いんだよね。拓夢…


『ごちそうさまでした』


一緒に、そう言ってご飯を食べ終わった。


「変わらない人なんていないよね」


私は、拓夢にそう言ってからキッチンにトレーをとりに行ってから、テーブルのお皿を片付ける。


「変わりたくないんだよ。俺はね。でも、環境や周りがそうはさせてくれないだろ?」


拓夢は、そう言いながらお皿をトレーに乗せてる。


「その得たいのしれない何かが怖いの?」


私の言葉に拓夢は頷いた。


「いつか、それが俺を包み込んで。俺じゃなくなる日がきそうで怖いんだ」


「大丈夫だよ。拓夢は、拓夢だよ」


私は、そう言ってお皿を下げる。シンクにお皿を入れる。スポンジを手に取ると拓夢が現れた。


「一緒に洗おうよ」


「うん」


そう言って、拓夢は後ろから私を抱き締めてくれる。


「まっつんが理沙ちゃんにプロポーズしたんだ」


「えっ?凄い」


「だろ?でも…。結婚ちゃんと出来るのかな?」


「どうして?」


私がお皿を持つと拓夢は、スポンジで洗ってくれる。


「やっぱり、掲示板が何度も立つのもあるし。未成年との淫交だとか何とか騒ぐ連中もいるんだ。それに、まっつんのお母さんがさ…」


そう言うと拓夢は、水を出す。


「お母さんが反対してるの?」


私は、そう言ってお皿を流す。拓夢は、スポンジを置いて手を流してからお皿を掴んで水切りラックにしまった。


「出てくると大変っていうか…。昔から、理沙ちゃんとの付き合いを認めてなかったから…。どうなるか、本当に心配なんだよ」


「私と拓夢が週刊誌に売られたみたいに記事になるって事?」


その言葉に拓夢は、「うん」と頷いた。


「そんな…。幸せになれないみたいで、何か嫌だね」


私の言葉に拓夢は、「そうだな」って呟いた。


「売れるって、そういう事なのかもな」


そう言って、私の手を握りしめてくる。


「夢を叶えるって大変な事だよね」


拓夢は、私の言葉に私を強く抱き締めてくる。


「贅沢だよな、俺。もう、この話はしない」


「何で?」


「だって、凛は夢を叶えられないだろう?」


拓夢の言葉に涙が溢れてくるのを感じた。


「俺だけ叶ったんだ。だから、この話はもうしない」


「いいよ。拓夢が夢を叶えられて。私は、嬉しいよ」


「凛、そう言いながら泣いてるだろ?手に涙が当たってる」


そう言われて、涙を拭おうとした私を拓夢は振り向かせた。


「ごめんね。まだ、ちょっと私ね」


「ずっと引っ掛かるんだよな!きっと、その事がずっと…」


「どうして?」


拓夢は、涙を流し始める。


「智がいない。SNOWROSEはやっぱり楽しくないんだよ。凛」


「拓夢」


拓夢が一生心の中で引っ掛かり続けるのはその事なんだってわかる。


「私達は、やっぱり似てるね?」


拓夢は、私の言葉に頬に流れる涙を拭ってくれる。



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