幸せになれるよ【凛】
「餃子包もうよ」
「そうだな」
私は、話をそらすようにそう言って拓夢から離れる。
「餃子の皮、取るよ」
拓夢は、そう言って冷蔵庫から餃子の皮を取り出した。
「一緒に包もう」
「出来るかな?」
「下手くそでもいいからやろう」
そう言って、私は拓夢に笑った。
「お水いれようか」
拓夢は、小さなお皿にお水を入れる。
「手洗うわ」
「うん」
拓夢は、手を洗ってる。私もその後、手を洗った。
「やり方、教えて」
「うん。スプーンで種をすくっていれるでしょ!それで、水をつけてからこうやってヒダを作っていくんだよ」
「へー、やってみるよ」
そう言って、拓夢は餃子を包んでいく。
「種いれすぎ!」
「本当だ!とじない」
「初めてだとやるよね」
「そうなの?凛もそうだった?」
拓夢は、そう言いながら私を見つめる。
「そうだったよ!初めては、そんな風にとじなかった」
「へー」
拓夢は、そう言ってニコニコ笑ってる。
私と拓夢は、餃子を包む。
「なぁ、凛」
「なに?」
「もっと、幸せになっていいんだよ!凛」
「何、それ」
私は、笑いながら餃子の種をすくって皮の上においた。
「蓮見との日々で、自分が汚いとか駄目な人間だって思ってたんじゃないのか?」
「思ってないよ」
私は、餃子をとじてお皿の上に置いてから、また新しい皮を取った。
「嘘だろ?凛」
「拓夢も同じだからわかるの?」
私は、そう言って餃子を包んだ。
「わかるよ。軽蔑するのは、自分自身なんだろ?」
涙が流れそうになるから、拓夢がいない左側に顔を向けた。
「龍次郎さんと付き合った時も捨てられると思ったの?」
拓夢は、そう言いながら餃子を包んでいるようでカチャカチャと音がする。
「そうだね。体を捧げなきゃ離れると思ってた」
「龍次郎さんは、何て言ったの?」
「龍ちゃんは、まだ早いって言った」
「離れなかったのわかってるんだよね」
その言葉に、私の目から涙が流れ落ちてきた。
「それでも、確かめたくなった?次は、赤ちゃんが出来ない体でも愛してくれるか知りたくなった?」
私は、拓夢の言葉に「ちょっとトイレ」と嘘をついた。
「待って」
拓夢は、手をさっと流してから私の腕を掴んでくる。
「トイレ漏れちゃう」
「泣いてるのバレたくないんでしょ?」
そう言って、拓夢は私の手を引き寄せる。
「何で…」
私は、拓夢を泣きながら見つめていた。
「俺と不倫して、さようならって言われたらどうするつもりだった?」
拓夢は、私の顔を覗き込んで言ってくる。
「それは…」
「本当は、わかってたんだよな!龍次郎さんは、凛の傍からいなくならないって」
私のズルさを拓夢に見抜かれている。私は、何も言えずに拓夢を見つめる。目を左右に揺らしてるのが自分でもわかるぐらい動揺している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます