かつての友達…【凛】

私の心は、今、荒んでる。そして、愛を受け入れる事が出来ないのがわかる。拓夢に服を渡されて着替えながらも、女としての価値を女を使う事だとまだ思い込んでる私がいた。蓮見君との日々は、私を変えた。求めてもらう為にはどうするべきか、求められるにはどうするべきか…。その為には、私は私の体を差し上げるしか出来なかった。


龍ちゃんが愛してくれている事も、拓夢が愛してくれてる事も頭ではわかってるのに、心がうまくそれを受け取ってくれなくて…。全部が、どこかに流れていくのを感じる。

拓夢は、そんな私のわがままを受け入れようとしてくれてる。

最初から、龍ちゃんの元に戻る事を決めていた私の事を拓夢はちゃんとわかっていた。

私が拓夢に会いに来たのは、きっと変わりたかったから…。蓮見君との日々で染み付いた考え方や女として生きていく意味。もう、全部捨てたかったのかな?


餃子を作りたいと言われて、私は材料を細かく切っていた。拓夢と恋人ごっこを演じると何だかくすぐったくてニコニコしてしまう。


SNSの質問をされて、私は戸惑っていた。あー、やっぱりちゃんと向き合うべきだったんだ。


「昔…」


「うん」


私は、もうこれを手放すべきだとわかった。


「一番仲がよかった和紗ちゃんって女の子がいたの」


「うん」


私は、餃子の種を混ぜながら話した。


「和紗ちゃんはね。いつも、私と雪乃の事を心配してくれたの」


「凛を心配してくれてたの?」


「そう。凛ちゃんが雪乃ちゃんに傷つけられてるんじゃないかって…」


「その子は?今も連絡とってるの?」


私は、拓夢に言われて首を横に振った。


「何で?喧嘩した?」


「雪乃がね。和紗ちゃんに私が和紗ちゃんの事を嫌いだって言ってるって言ったりしたの。和紗ちゃんに凛が言った文句ってのせられてた」


「は?何だよ、それ!凛は、言ってないんだろ?」


「言ってないよ」


「じゃあ、和紗ちゃんと仲良くなれるんじゃないか?」


「無理なの」


「どうして?」


拓夢は、私を見つめてくる。


「和紗ちゃんは、もうどこに行ったかもわからない。生きてるか死んでるかも知らない」


「何で?」


「蓮見君が、仲良かった友達が好きだったの。でも、彼が好きだったの誰かわかる?」


「雪乃さんか?」


私は、首を横に振った。


「まさか、凛?」


「そう」


「それで、和紗さんは雪乃さんを信じたのか?」


「そう」


あの頃の悲しかった日々を思い出した。


「凛がその人を好きだと思われたの?」


「それは知らないけど…。色目を使うなとかは言われてた。まあ、SNSでだけどね」


「ブログみたいなのに書かれてたの?」


「そうそう。書かれてた!雪乃からのメールを和紗ちゃんが載せてたりしてね。この女ないとか言われたりしてて」


「雪乃さんって最低だな」


私は、餃子の種を混ぜ終わった。


「拓夢、やった方はそんな昔の事覚えてなんかないよ!だから、雪乃は今でも当たり前みたいに私に話しかけてくるの」


拓夢は、そう言った私を抱き締めてくる。


「やられた方は、こんなに傷だらけなのにな」


その温もりが愛しくて優しくて泣ける。


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