服着なよ【凛】

私は、急いで救急箱を持って龍ちゃんの傍にやってきた。


「凛、服着なよ」


龍ちゃんは、そう言って「いっ」と言いながら毛布を被せてくれた。


「大丈夫?服着てくる」


私は、立ち上がった。


「うん、着ておいで」


私は、頷いて洗面所に行ってモコモコのルームウェアを着て急いで戻った。


「それ白だから汚れない?」


「いいの」


龍ちゃんにそう言われたけど、私はバスタオルを外した。


「痛いでしょ?」


「大丈夫、大丈夫」


「消毒はしない方がいいよね!洗面所で傷口に流してこれる?」


「ああ、うん。わかった」


龍ちゃんは、ゆっくり立ち上がって洗面所に行った。薄いピンクのバスタオルは、龍ちゃんの血がついていた。


「ごめん」


龍ちゃんが、フェイスタオルで腕を押さえながら行った。


「血は?」


「ちょっとだけだよ」


私は、龍ちゃんの腕を見せてもらう。


「ちょっと抉れてるかも」


そう言って、ガーゼを当てて包帯を巻いていく。


「龍ちゃん、私ね」


「うん」


「結局、無理だったよ」


私は、包帯を巻きながら言った。


「仕方ないよね。こればっかりはね」


龍ちゃんは、そう言いながら私の頬を左手で撫でてくれる。包帯を巻き終わった私は、龍ちゃんの隣に座った。


「ごめんね。龍ちゃん。期待して私を抱いてくれてたのに…。結局、うまくいかなくてごめんね」


話してるうちに、私の視界は涙で滲み始める。


「別に俺はいいよ。凛の気持ちに比べたら…。たいした事ないよ」


龍ちゃんは、そう言って痛い方の腕で私の手を握りしめてくる。


「ごめんね。龍ちゃん。本当は、龍ちゃんだって……期待してたんでしょ?」


私の言葉に龍ちゃんは、柔らかく笑ってくれる。


「ちょっとは、そうだったかもな!でも、あの時と違ってそうでもないかも…。だって俺は、凛と一緒にいたいだけだから…」


龍ちゃんは、左手で目を擦りながら話していた。私は、龍ちゃんが握りしめた手を握り返して話す。


「龍ちゃん、本当は私…。凄く期待してた」


「そっかあ…」


龍ちゃんの笑顔に涙が止まらなくなってきて、私は泣きながら話す。


「拓夢の子じゃないっていうのはわかってたよ。でも、そうなら龍ちゃんの子だってわかってた。それにね、私。龍ちゃんじゃない人の子は…。いらないって思ってたから…。だから、余計に今辛い。悲しい。龍ちゃん」


私の言葉に龍ちゃんは、左手で目をおって話す。


「駄目だなー。そんな風に言われたら俺。駄目だから…」


「泣いちゃうって事?龍ちゃんが…」


龍ちゃんは、ゆっくりと顔を見せる。


「うん、かもな…。もうすでに…」


そう言った瞬間、龍ちゃんの目から涙がスッーって流れ落ちた。


「時々、わかんなくなる時あるよな?」


龍ちゃんは、そう言って左手を私の頬に当てた。


「何が?」


私は、そう言って龍ちゃんを見つめていた。

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