堂々としとけば…【凛】

「帰ろう」


「うん」


私は、龍ちゃんの言葉に歩きだした。


「相沢さんと連絡先交換しといた」


いつの間にか、番号を交換していたらしく。龍ちゃんは、そう言って笑った。


「あのね龍ちゃん、週刊紙」


そこまで言うと車について、龍ちゃんは助手席を開けてくれる。


「ありがとう」


「うん」


ドアが閉められて、龍ちゃんは運転席に乗り込んで、扉を閉めてエンジンをかける。


カチッとシートベルトをかける音が同時に車内に響いた。


「坂東さんの事、心配してる?」


右のウィンカーを出したカチカチって音と龍ちゃんの声が重なった。


「私ってバレたら…」


「別に殺人したわけじゃないんだから、堂々としとけばいいんだよ」


龍ちゃんは、そう言って車を発進させた。


「いいのかな?」


「いいに決まってるだろ!」


そう言って龍ちゃんは、ジッと前を見つめている。


「世間は、許さないよ!不貞行為に厳しいから」


「許すのは、世間じゃなくて俺だから」


そう言った龍ちゃんの横顔は、いつもよりもかっこいい。


「許せるの?」


許してくれるの?こんな私を…。言いたい言葉をうまく話せなくて俯いた。


「許すとか許さないとかでしか判断しなくちゃいけないのかな?俺は、いつもそう思ってた。二択しか選べないってしんどいよなって」


龍ちゃんは、そう言いながら真剣に前を見てる。運転に集中してる龍ちゃんを私は邪魔してる。


「いい加減な事をしたのは、私だから…。許されないってわかってるから」


私は、自分の手を握りしめながら言った。涙が流れてきて、ポタポタと手にあたる。


「凛、許すかどうかは俺が決めるんだよ」


赤信号で停まった龍ちゃんは、パーキングにシフトを入れて私の手を握りしめる。

私は、泣き顔で龍ちゃんを見つめる。


「凛、もうそんなに自分を責めるなよ」


「何で?何で、そんなに優しいの」


私は、大人げない声を上げて言ってしまう。何で私が龍ちゃんに怒ってるのよ。そんなの間違ってる。わかってるのに、わかってるのに…。


「週刊紙が出るの怖いんだな」


龍ちゃんは、そう言って私の手を擦ってきた。


パアー、パアー


「青だった」


龍ちゃんは、すぐに運転モードになって私から手を離した。もっと手を握りしめていて欲しかった。私は、両手を自分で擦りながら龍ちゃんを見つめていた。


「12月23日に週刊紙が出て、どうなるかはわからないけど…。世間は知らないけど、俺は何も変わらないから」


そう言って、龍ちゃんはニーと口元を引っ張っていた。私に笑ってるってわかるぐらいに大袈裟に…。


龍ちゃんみたいに優しい人は、私の周りを探したって見つからないと思う。龍ちゃんに出会えたのは、奇跡だったと今でも思う。

だから、私は龍ちゃんを幸せにしたかったし。龍ちゃんにも幸せになってもらいたかった。


だから…。だから…。

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