待っていてくれた【拓夢】
俺は、エレベーターを降りてビルを出た。
「おせーよ」
「待ってたの?」
そこに居たのは、まっつんだった。
「うん。心配で」
「ありがとう」
俺は、そう言って笑った。
「帰ろうか」
「うん」
「凛さんとは?」
「全く会ってないよ」
俺は、まっつんと並んで歩きながら話す。
「そっか…。美沙ちゃんとは?」
「今の所、飯食べるだけの関係でいてくれてるけど…。いつまでかな?暴走する所あるから」
「そうだよな」
まっつんは、鼻の頭を書きながら笑ってる。
「相沢さんから、週刊紙はやっぱり出る事聞いた。凛と手を繋いでる写真もあって。俺は、いいんだけどさ…。凛に迷惑かからないか心配で仕方ないんだ」
「旦那さんとの仲が悪くなるんじゃないかって気にしてる?」
「それだけじゃないよ!近所の人にバレたりとかしたら…って」
まっつんは、俺の言葉に何かを察したようだった。
「顔は、隠されててもわかったりするもんな」
「そうなんだよ。俺が夢を追いかけなきゃ…」
俺の言葉にまっつんは背中をバチンと叩いて来る。
「いたっ」
「馬鹿か!凛さんは、拓夢の為に離れたんだろ?それにさ、夢もなかったら…。拓夢、おかしくなってたんじゃないのかな?美沙ちゃん時よりも酷く落ち込んでさ。最悪…」
まっつんは、そこまで言うと話すのを躊躇った。わかるよ。俺だってまっつんが言いたい事。だって、凛がいない毎日はゆっくりと動いて色彩を放っていないみたいだから…。でも、SNOWROSEの事に向かってる時だけは、街も人もキラキラして見えてさ…。
「拓夢?拓夢?聞いてる?」
何回かまっつんに呼ばれていたらしく。俺は、まっつんに「うん」と小さく返事をした。
「SNOWROSE成功するといいな!」
「大丈夫だよ!だって、あの相沢さんだよ」
俺の言葉にまっつんは、「そうだよな」って笑って言った。
「そうだよ!相沢さんなら、やってくれるよ」
俺は、そう言ってまっつんの肩に手を置いた。
「そうだよな!大丈夫だよな」
「ああ!大丈夫だ。俺達は、あの舞台で演奏する事だけを楽しみに過ごそう」
「そうだな」
「うん」
俺とまっつんは、ニコニコ笑いながら帰宅した。それから、クリスマスイブまでは目まぐるしくて…。今までと変わらない生活なのに、俺は、溝口へ引き継ぎもなかなか進められなかった。
「まあまあ、時間はあるから」
そう言って、課長が笑ってくれていたけど結局終わらずに退社を迎えた。
「あの、落ち着いたら残りをやりたいんです」
「いいよ!星村君がそうしたいなら」
そう言って、課長は笑ってくれていた。
俺は、深々と頭を下げた。みんなにお別れをされて、会社を後にした。お別れ会は、SNOWROSEが成功してからにしようって事になった。もしかしたら、戻ってくるかも知れないから…。
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