その為にも…【拓夢】

「俺は、24日までに必ず君達のチケットを売るよ!だから、君達もデビューイベントまでの間、どんな自分達になるかを考えて欲しい」


相沢さんの言葉に俺達は、頷いていた。


「じゃあ、今日はこれぐらいかな…。あっ!星村君だけは残ってくれるかな?」


「はい」


俺は、相沢さんにそう言われて残る事になった。俺以外のメンバーは、「お疲れ様でした」と出て行ってしまった。


「ごめんね!星村君だけ残して…」


「いえ」


相沢さんは、俺の隣に座る。


「皆月龍次郎さん。素敵な人だね」


俺は、相沢さんの言葉に固まる。


「そんな顔しないで!別に俺は、星村君と凛さんを責めるつもりはないよ」


相沢さんは、そう言って俺の肩を叩いた。


「ただね。事務所こっちとしては、ほら。週刊紙の記事の内容が本当か聞かないといけなかったんだ」


そう言って、相沢さんは鞄からタブレットを取り出して俺に見せる。


「これが出たら…」


そこには、前に見せられた時と違う写真が映っていた。凛と手を繋いで歩いてる写真。


「星村君。残念ながら、この記事は出るんだ」


相沢さんの言葉に、俺は泣きそうになるのを堪えるように下唇を噛んだ。


「星村君が、凛さんと過ごした時間は消えない。だから、この記事も揉み消せない。でも、逆に考えたら話題性は生まれましたね」


相沢さんは、そう言ってタブレットを鞄にしまった。


「いつ出るんですか?」


「12月23日です。クリスマスイブではなくてよかったですよ」


相沢さんは、そう言って笑ってる。


「相沢マジックが失敗したって言われてもいいんですか?」


俺の言葉に相沢さんは、「フフフ」と笑ってからこう言った。


「失敗は、しないよ!その為に、皆月さんに会ったから!まあ、どうなるかは、皆月さん夫婦の考え方次第だった。でも、二人共。素敵な考えだったよ!だから、星村君はデビューの事だけ考えなさい。外野の声なんか聞かなくていい。君を愛してくれるファンや大切にしてくれる仲間の声にだけ耳を傾けておくんだよ」


そう言って、相沢さんは立ち上がった。


「話しは、それだけだから、12月25日を楽しみにしてるよ」


その言葉に俺も立ち上がった。


「SNOWROSEを必ず俺が、新しい世界ばしょに連れて行くから」


相沢さんの力強い声に頷いていた。


「みんなが今まで見たくても見れなかった世界ばしょに一緒に行こう」


「はい」


相沢さんは、俺の顔を見つめて言う。


「心配しないでいい!俺が何とかするから…。星村君は、歌う事だけ考えるんだよ」


そう言って、相沢さんに肩を叩かれる。


「わかりました」


「じゃあ、気をつけて帰って」


「はい」


俺は、相沢さんに深々と頭を下げてから部屋を出て行った。



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