チケットが売れなかったら【拓夢】

「その時は、イベントを持って事務所うちとは契約終了だ」


相沢さんは、俺達四人を見つめながらしっかりとした口調で話す。


「もしも、入らなかったらCDを売る必要もないよ」


相沢さんは、穏やかに諭すような口調で言っていた。


「わかりました。それなら、出来る限りやりますよ」


まっつんは、そう言って力強く頷いていた。


「じゃあ、俺は出来る限りの事をやるから…。SNOWROSEは、最後にいつも通りの日常を楽しんでおいで」


「練習は?」


しゅんの言葉に相沢さんは、首を横に振った。


「いらないんですか?」


かねやんの言葉に、相沢さんは「みんなが求めてるのは、完璧な演奏じゃない」と言った。


「じゃあ、何が…」


かねやんの言葉に、相沢さんは俺達を見つめながら話す。


「みんなが知りたいのは、君達が応援するに値する人物かどうかだよ」


そう言って、テレビをつけると何かを再生した。


映し出されたのは、OLの二人組だった。


「そうなんです。やっぱりスキャンダルがないからいいと思うんです」


「そうそう。はやとはカッコいいだけじゃなくて、浮いた噂がないから…」


どうやら二人は、智天使ケルビムの話をしているらしい。

画面は、別の人物に切り替わる。


「もっちんのギターが上手いのは、当たり前にわかってるんですよ」


「そもそも、バンドでデビューするって事は上手いのは前提にあるわけじゃないですか!」


「やっぱり、スキャンダルもないし、硬派なイメージが強いかな」


そう言うと三人組の女の子達は、嬉しそうに笑っている。そして、画面はまた別の人物に切り替わった。


「熱愛が出た時は、ショックはありましたよ」


「でも、ドラムのジュンは真剣交際を認めたから、応援しようと思いました」


「あそこで、はぐらかされてたらファンやめてたかも」


「わかる!そこは、誠実でいて欲しかったから…」


四人組の女の人は、そう言いながら頷いている。また、別の人物に切り替わった。


「ベースのユウちゃんは、やっぱりちゃんとしてるのが伝わってくる」


「何かみんながごちゃごちゃしてても、何だかんだ言って纏めちゃうんだよね」


「そこが、凄くいい」


そう言って、二人組の女の人は笑っていた。相沢さんは、テレビを消して俺達を見る。


「今のは、智天使ケルビムのファンの言葉だ!今の話を聞いてわかるだろ?君達も同じだ。デビューしている時点で、ファンからしたら技術はあると思っているんだ。その上で、必要なのは君達が応援するに値する人物かどうかなんだよ」


相沢さんの言葉に俺達は、相沢さんを見つめていた。


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