帰宅と会場へ【拓夢】
帰宅した俺を待っていたのは、美沙だった。
「おかえり」
「ただいま」
「週刊紙、出たね」
「そうだな」
俺は、いつも通り玄関の鍵を開ける。
「拓夢、まだ凛さんが好きなの?」
鍵を開けて玄関に入った瞬間。美沙は、俺にそう言った。
「ごめん」
俺は、そう言って革靴を脱いだ。
「SNOWROSEが売れて、凛さんに拓夢が会ったりしたら、私どうするかわからないって先に言っとく」
美沙は、そう言って俺を見つめてくる。
「それなら、それで!仕方ないよな」
俺は、美沙にそう言うしか出来なかった。
「それじゃあ、拓夢。バイバイ」
美沙は、そう言ってクリスマスケーキを渡してきた。
「もう、おしまいでいいのか?」
俺の言葉に美沙は、薄く口を開いて笑って「他にしたい事が出来たの」と言った。
「美沙、待って」
俺は、玄関を出て行こうとする美沙の腕を掴んだ。
「SNOWROSEを潰すつもりか?」
「さあね。ただ、あの方は、そうなるのを喜んでくれる」
「あの方って誰だよ」
「いずれ、わかるよ!拓夢達が、進む先に…。あの方は、いるから」
そう言って、美沙は俺の手を離した。
「拓夢を愛してるよ。でもね、私を見てくれないのならあの方を選ぶしかないでしょ?あの方は、私を愛してくれるから…。それに、私はやっぱり彼女を許せない。拓夢と彼女の不貞を私は許す事が出来ないの。バイバイ」
そう言って、美沙は玄関から出て行った。
デビューイベントが、明日に迫ってきているのに美沙からの謎の圧力に心が押し潰されそうになる。
俺は、鍵を閉めてケーキの箱を持って行く。
「はぁー」
ため息をついてネクタイを外して、ケーキの箱を開いた。
【デビューおめでとう】と書かれたチョコがのっている。
「美沙は一応、応援してくれてたのかな?」
俺は、小さいホールケーキを見つめながら笑っていた。俺は、ケーキを冷蔵庫にしまった。
それからは、ご飯を食べたりお風呂に入ったり、いつもと同じ事をしていたらあっと言う間に11時になってしまった。
明日は、朝からだと言われていた。
「さっさと寝よう」
俺は、歯を磨いてさっさと布団に入った。
◆
◆
◆
朝の6時、アラームの音がなる前に目が覚めていた。
天井を見つめながら、凛は来てくれるのかを考えていた。
「行くか」
疲れが溜まってる体を引きずるように起き上がって用意をした。俺は、水だけ飲んで朝食もとらずに家を出た。
「おはよう、拓夢」
駅につくとまっつんがいた。
「朝御飯食わない?そこ」
そう言われて、見つめた先にあの【アンジェロ】があった。
「何でいんの?」
「そっちか?理沙から聞いたよ。思い出だろ?行こう」
まっつんは、気にしないフリをして笑って俺を【アンジェロ】に連れて行った。
「さあ!頑張るか」
【アンジェロ】でモーニングを食べ終わった俺達は、やって来た電車に乗り、指示された場所に来ていた。
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