構いませんよ…私で【凛】

相沢さんの言葉に龍ちゃんは、ニコッと微笑んで「構いませんよ、私でよければ…」と言った。


相沢さんとはやとさんは、龍ちゃんを神様でも見るような眼差しで見つめている。


「やめて下さい。そんな目で見ないで下さい」


龍ちゃんは、そう言いながら頬を掻いている。


「すみません。やはり、皆月さんは神様みたいなので…」


相沢さんは、そう言いながらニコニコと笑っている。


「私だって怒りますから…」


龍ちゃんは、そう言って笑う。


「じゃあ、凛さんに聞きたいんですが…」


はやとさんは、そう言って私を見つめる。


「皆月さんを裏切っている間、苦しかったですか?」


その言葉に私は、固まってしまった。


「はやと、意地悪な質問はしちゃ駄目だろ?」


相沢さんは、そう言ってはやとさんの肩を叩いた。


「何か知りたくて。こんな神様みたいな人。裏切って苦しくなかったのかなーって。ごめんなさい」


そう言って、はやとさんは私に頭を下げる。


「わ、私は…」


私は、絶望を忘れさせてくれる日々を選んだ。でも、龍ちゃんがいなくなるのは嫌で…。私は、ポロポロ泣いていた。言いたい言葉をうまく言えなくて…。


「ちょっとだけ、すみませんが失礼してもいいですか?」


龍ちゃんの言葉に、相沢さんが「我々が少しだけはずしますよ」と言った。


相沢さんは、はやとさんを立たせる。


「すみません。五分だけお願いします」


龍ちゃんは、そう言って相沢さんに頭を下げた。


「わかりました」


相沢さんは、頭を下げてはやとさんを連れて出て行った。


パタン…。扉が閉まった音が聞こえて龍ちゃんは、私を抱き締めてくれる。


「大丈夫、大丈夫」


そう言って、龍ちゃんは背中を優しく撫でてくれる。


「ごめんなさい。ごめんなさい。私…私ね」


「言いたくない事は言わなくていいんだよ」


そう言って、龍ちゃんは、優しく頭から背中まで撫で続ける。


「私、龍ちゃんを裏切ってた。本当、最低だよね。酷いよね。ごめんなさい、ごめんなさい」


私は、涙がボロボロ止まらなくて、龍ちゃんのスーツの肩を濡らしていく。


「凛、俺ね。さっきの言葉に嘘はないよ。それに、星村さんでよかったと思ってるんだ」


「どうして?」


龍ちゃんは、私から離れて顔を覗き込んでくる。


「星村さんは、ちゃんと凛を愛していたよ。期間なんて関係ない。星村さんは、凛を深く愛していた。だから、俺ね。正直、負けたかもって思っちゃったんだよ」


そう言って、龍ちゃんは私の涙をハンカチで拭ってくれる。


「それでも、星村さんじゃなくて、凛は俺を選んでくれた。もしかして、同じだと思った?」


私は、龍ちゃんの言葉に目を伏せた。


「不妊って、心まで蝕んでいくね」


龍ちゃんは、そう言って私の手を握りしめてくれる。


「星村さんとは、違う未来があるかもしれないよ!」


私は、その言葉に首を左右に振った。


「本当に、このまま俺と居ていいの?」


私は、うんうんと首を立てに振って龍ちゃんを見つめる。


「この先も悲しい事や苦しい事が待ってるかもしれないよ」


「それでも、龍ちゃんといたい」


私は、泣きながら龍ちゃんを見つめていた。


コンコンー


「はい、どうぞ」


龍ちゃんは、私の耳元で「後で話そう」と言って頭を優しく撫でてくれた。


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