龍ちゃんが教えたかった事【凛】
『ごちそうさまでした』
私達は、いつものようにそう言った。
「美味しかったよ」
「よかった」
「うん」
「龍ちゃん」
「何?」
「いつも、ありがとう」
私は、そう言ってトレーに食器をいれていく。
「急に何?怖いんだけど…。また、俺に何か隠してる?」
龍ちゃんは、そう言って私の隣に立った。
「隠してないよ」
私がトレーを持とうとするのを龍ちゃんは、代わって運んでくれた。私は、テーブルを拭いてから、キッチンについていく。
「お皿洗うよ」
「いいよ、明日仕事なんだから…」
「じゃあ、一緒に洗おうか?」
「それなら、いいよ」
龍ちゃんは、スポンジに洗剤を垂らして水を少しだけ出してモコモコと泡を作ってる。
私は、わざとその手を掴んだ。
「新婚の時にやってたのやりたいの?」
龍ちゃんは、そう言って笑ってくれる。
「うん」
その言葉に龍ちゃんは、スポンジを私の手に握りしめさせた。
「ほら、凛が洗わなきゃ!」
あの日、拓夢にされたように龍ちゃんは私を後ろから抱き締めてくれる。
「わかってる、洗うから」
「はい、お皿しっかり持って」
龍ちゃんがスポンジを持ってる私の手を掴んでくる。
「龍ちゃん」
「懐かしいな!結婚してすぐは、ずっと凛にくっつきたかったから…」
そう言って、龍ちゃんはお皿を持つ方の手にも手を重ねてきた。
「もう、今はくっつきたくないの?」
「今だってくっつきたいよ!でも、そこは大人だから我慢してるんだよ」
そう言って、お湯を出した。龍ちゃんは、私をちゃんと愛してくれてる。お皿を一緒に流すと、龍ちゃんが水切りかごに置いてくれる。
「我慢しなくていいのに…」
私は、小さく呟いた。
「明日とか考えちゃうんだよなー。年だから」
そう言った龍ちゃんの言葉が耳に響く。
「確かに、明日起きれなかったら大変だもんね」
「そうそう」
流しては、しまう。単純な作業でありながら、くっついてるだけで幸せだった。
「愛してるからこそ、凛に負担をかけたくないとか思っちゃってたかな」
龍ちゃんは、そう言ってから、私の手を掴んでスポンジを一緒に洗い出した。
「愛って優しいものだって、凛には知って欲しかったんだ」
私の手も綺麗に洗ってくれて、水を止めた。
「蓮見から受け取った愛なんかじゃなくて。ちゃんとした愛を知って欲しかったんだ。まあ、ちゃんとしてるかは俺にもよくわかんないけどさ…」
龍ちゃんは、そう言ってから離れようとする。私は、龍ちゃんの手を握りしめる。
「私にちゃんと愛を教えてくれたのは、龍ちゃんだよ」
私の目から涙がポトポトと流れてくる。
龍ちゃんは、私の耳元で囁く。
「だから、俺は、凛に優しくしたい」
そう言ってギュッーと抱き締めてくれた。
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