向かった先に…

「来ちゃったね」


理沙ちゃんは、そう言って立ち上がった。


「行こう、凛ちゃん」


「うん」


足取りが重いのを感じる。だって、もうあの場所に行きたくなかったから…。

電車乗り込む。


「凛ちゃん、昨日の今日で嫌だよね」


「うん、少しね」


理沙ちゃんは、私の手を握りしめてくれる。手から理沙ちゃんの優しさが温もりと共に流れ込んでくるのを感じる。


「大丈夫だよ!理沙が、ついてる」


「うん、ありがとう」


私は、そう言って前だけを見つめて言った。


「凛ちゃん、大丈夫だから…」


理沙ちゃんは、そう言ってくれていた。


「ありがとう」


私と理沙ちゃんは、最寄り駅のホームに降りて歩き出す。階段を上がって改札を抜ける。


「結局、ここのパンケーキ食べれなかったんだよねー」


「ごめんね、私のせいで」


「別にいいって」


理沙ちゃんは、そう言ってニコニコ笑ってくれる。パンケーキの店を通りすぎて、公園についた。


「理沙ちゃんまで、連れてきたんだー」


入り口で、美沙さんが立っていた。


「ここね、事件があったんだって!ほら、keepoutってテープが見えるでしょ?」


そう言って、美沙さんは私を値踏みするかのように見つめる。


「まあ、別に!人が死んだとかじゃないから!あれは、回収忘れなのかもね?」


何かを知ってるようにニヤリと笑って私と理沙ちゃんを見ている。


「別の場所で、話しますか?」


公園に入りたくなくて私は、そう言った。


「それは、嫌よ」


そう言って、美沙さんは公園に入っていく。凛君が刺された場所、龍ちゃんと蓮見君がいた場所、私がされそうになった場所…。鮮やかに甦るのは、昨日の出来事だから…。


「犯罪を犯したら終わりよね?」


美沙さんは、そう言って黄色のテープを触った。


「美沙ちゃんがやったの?」


理沙ちゃんは、美沙さんにそう言った。


「私は、頼まれて、必要な話をしただけ…」


「必要な話って何?」


理沙ちゃんは、美沙さんにそう言って首を傾げて見せる。


「それを理沙ちゃんに話す必要はないわ!私とあの方との話だから…」


そう言って、美沙さんはクスクスと笑いだしながら、「理沙ちゃんと私の中だから、一ついい事を教えてあげる」と言って理沙ちゃんを見つめている。


「何?」


理沙ちゃんの問いかけに、美沙さんは「これから、色んな写真が出回る可能性があるかもね」と言って笑った。


「写真って?」


「さあね!あの方の機嫌次第って事かしらね!」


ニヤリと笑った口元を浮かべながら美沙さんはテープを触っている。


「あの方って?」


「言えるわけないじゃない!」


美沙さんは、そう言って理沙ちゃんを睨み付ける。


「蓮見って人を凛ちゃんに会わせたのは?」


理沙ちゃんの言葉に美沙さんは、「あの方よ」って笑った。美沙さんの話すあの方が誰なのか私にはわからなかった。



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