電話に出た人は…

「もしもし」


私の声に、彼女はおかしそうに笑った。


『あー。やっと掛かってきたか』


「あの、何でしょうか?」


『あのさー。今日会えませんか?』


「えっ…」


『皆月凛さんにお話したい事があるんです。無理なら、拓夢が終わるかもね』


「会います。どこに行けば?」


『あの公園にしましょうか!11時に』


「わかりました」


プー、プー


電話が切れて、私はすぐに理沙ちゃんに連絡する。


プルルルー

プルルルー


『はい』


「理沙ちゃん」


涙がボロボロ流れてくる。


『どうしたの?凛ちゃん』


「美沙さんから、呼び出されたの」


『えっ?何時?』


「11時にあの公園」


『理沙も一緒に行くから』


「本当に?」


『うん!今から用意するから、10時に駅でいい?』


「うん」


『じゃあ、後でね』


「うん」


プー、プー。


理沙ちゃんが来てくれるってわかってホッとしていた。私は、急いで用意をする。美沙さんは、拓夢と私に関する何かを持っている気がしてならなかった。

用意が終わった頃には、時刻は9時40分になっていた。


「急がなきゃ!」

私は、ショルダーバッグを下げて家を出る。

秋の空は天気が変わりやすいというけど、今日は雨は降らないと天気予報が言っていた。鍵を閉めて、駅へと急いだ。


「凛ちゃん」


駅に着くと理沙ちゃんが手を振ってくれた。


「おはよう」


「おはよう!はい」


そう言って渡されたのは、アンジェロのパンだった。


「ありがとう」


「ううん!食べてから行こうよ」


「うん」


私と理沙ちゃんは、改札を抜けてホームに降りる。人が少ないベンチを見つけて座る。


「はい、手拭くの」


「ありがとう」


アルコール消毒のウェットティッシュを渡されて、手を拭いた。


「昨日の今日で、あの場所つかえるのかな?」


理沙ちゃんは、そう言いながらパンを取り出した。「いただきます」二人で笑い合って理沙ちゃんが買ってくれたクリームパンを食べる。私は、昨日の今日で、あの場所に行きたくはなかった。


「警察には?」


「まだ、連絡はないから…」


「連絡来てから行くの?」


「そう言われた」


「そっか…」


「ごめんね。拓夢に内緒にして欲しいなんて言っちゃって」


理沙ちゃんは、首を横に振った。


「今日のも内緒でしょ?」


その言葉に私は頷いた。


「じゃあ、優太にも話さないから…」


「ごめんね!理沙ちゃん」


「いいの!凛ちゃんは、何も気にしなくて…」


そう言って、笑ってくれる。


『ごちそうさまでした』


アンジェロのクリームパンを食べただけで、私は、ホッとしていた。


「これ、飲むでしょ?」


「甘そうだね」


「意外に甘くないよ」


そう言って、理沙ちゃんはカフェオレを差し出してくれる。


「次、来たら乗ろう」


「そうだね」


私達は、電車が来るまでの間他愛ないお喋りを繰り返していた。


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