君は、何を知ってる?
凛君は、龍ちゃんの言葉に怒っているようだった。
「僕は、凛さんを愛してます」
凛君の母親が凛君を悲しそうに見つめていた。
「そう!君みたいな若い男の子に愛されるなんて凛は幸せ者だね」
大人の余裕たっぷりな、龍ちゃんの言葉に凛君は歯痒そうに下唇を噛んでいる。
「じゃあ、君は、凛の何を知ってる?例えば…」
そう言うと龍ちゃんは、私のアイスコーヒーを引き寄せた。ガムシロップとミルクを私好みに味付けをして差し出してきた。
「どうぞ」
私は、龍ちゃんからアイスコーヒーを受け取って飲む。ごくっ…
「美味しい」
「それは、よかった」
そう言って、龍ちゃんはニコニコと笑っていた。
「それが何なんだよ」
凛君は、そう言って怒っていた。
「何か…。君は、凛が何を好きか知ってる?」
「そんなの…」
凛君の目にじんわりと涙が溜まってくる。
「じゃあ、嫌いなものは?」
凛君は、答えられずにいる。
「欲しいものは、わかるよね?」
最大のチャンスとばかりに、凛君は「赤ちゃん」だと答えた。その言葉に、龍ちゃんは首を横に振ってため息を吐いた。
「凛さんが欲しいのは、赤ちゃんだよ」
もう一度、言った凛君に龍ちゃんは、こう言った。
「凛が欲しいのは、絶望を消してくれる交わりだよ」
私は、その言葉に龍ちゃんを見つめていた。
「そんなわけない!赤ちゃんが欲しいって言ってた」
「それは、表面的な事だよ!凛の奥をちゃんと君は見た?凛がどうして、君じゃなくて星村さんを選んだかわかってる?」
その問いかけに、凛君は答えられずにポロポロと泣き出した。
「君はね、何もわかってないよ。若さには、勢いや瞬発力はあっても大人みたいに深くじっくり物事を捉える事がまだきちんと出来ていない。君は、表面上の凛を見つめられても、凛の深部は見れていない」
凛君は、何も言えずにただ泣いてる。
「それはね、何故だかわかる?」
凛君は、泣きながら龍ちゃんを見つめる。
「君は、まだ子供で!自分の事さえもわかっていない人間だからだよ」
その言葉に何も言えない凛君は、下唇を噛んでいる。
「君は、まだ俺達の半分も生きていない。そんな君に凛の深部を見る事は不可能なんだよ。若い頃は、勢いと感情だけで相手をいのままに操れる気がする。でもね、違うんだよ。大人は、勢いや感情だけで何か突き動かされないんだよ」
凛君は、もう何も話はしなかった。
「君が、凛を愛してくれる事は嬉しいよ。凛に寄り添ってくれた事は、感謝してる。でも、もう少し。凛の立場を思いやるべきだったかもしれないね」
その言葉に蓮見君の娘が口を開いた。
「私がやった事だから、凛は関係ない」
龍ちゃんは、その言葉にふっと笑って言った。
「君がやろうが、やるまいが、ここに証拠となるこれがある。これを君が撮ったわけじゃないだろ?」
龍ちゃんの言葉に蓮見君の娘は黙った。
「もう、いいじゃない。あんたの奥さんが息子にこんな事したんだから」
凛君のお母さんは、重苦しい雰囲気に耐えられなくなったのかそう言った。
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