だから、何だよ

龍ちゃんは、「だから、何だよ」って言って蓮見君に近づいた。


「来んな」


「凛の痛みや悲しみは、そんなんじゃ足りないんだ!お前にわかるか?」


蓮見君は、刃物を振りおろした。龍ちゃんは、その手を止める。


「離せ」


「離すわけないだろ」


蓮見君は、龍ちゃんに手を掴まれて動けないようだった。二人の間に、ポタポタと何かが落ちていくのが見える。


「離せ」


「警察だ!刃物を下ろしなさい」


蓮見君は、驚いた顔をしてる。


「ふざけるな!お前のせいだ」


蓮見君は、龍ちゃんを睨み付ける。蓮見君の娘が、凛君をその間に引っ張っていく。


「離せよ!逮捕されんだからよ」


蓮見君は、そう言って龍ちゃんを睨み付ける。


「満足だろ?」


龍ちゃんは、蓮見君の腕を離した。刃物が地面に落ちる。蓮見君は、ズボンに手をかけて履くと、フラフラと警察に向かって歩き出した。


「凛、大丈夫か?」


龍ちゃんは、私の頬に手を当ててくれる。


「龍ちゃん、手…」


「あっ、止めた時にだな」


龍ちゃんの手から血がポタポタと流れている。


私は、バックからハンカチを取ると龍ちゃんの腕に巻き付ける。


ピーポー、ピーポー


救急車のサイレンが聞こえて止まる。救急隊員の人が凛君に近づいていく。


「大丈夫ですか?」


「あの手が…」


龍ちゃんに声をかけてくるから、私はそう言った。


「見せてもらえますか?」


「はい」


龍ちゃんは、腕を見せている。私とは違って、で際よく手当てされる。


「後で、病院に来て下さいね」


「わかりました」


隊員の方は、凛君を連れて行った。私は、それを見つめていた。


「すみません。警察です」


隊員さんがいなくなって、警察がやってきた。


「少しだけお話を伺いたいのですが…」


「はい」


私と龍ちゃんは、そう言われた。龍ちゃんは、さっきの出来事を話していた。私も、さっき起きた出来事を話した。警察は、龍ちゃんには聞こえない場所で話をしてくれた。


「ご協力感謝致します。近いうちに警察署にもう一度来ていただけますか?」


「はい」


「では、失礼します」


そう言って、警察はいなくなった。私は、拓夢の家で蓮見君に襲われた事を龍ちゃんに話せていなかった。


「凛ちゃん」


理沙ちゃんとまっつんさんが、やってきた。


「お願い、誰にも言わないで」


私は、理沙ちゃんを見つめてそう言った。


「でも……」


「私なら、大丈夫だから!ほら、怪我もなかったし」


無理矢理に笑顔を作って笑って見せた。


「凛ちゃん」


「お願い、理沙ちゃん」


まっつんさんは、理沙ちゃんの肩を叩いた。


「優太…」


「理沙」


子供にメッと言うような顔をしてまっつんさんが理沙ちゃんを見つめる。理沙ちゃんは、小さな声で「わかった」と言った。

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