エピローグ【凛の話5】

ごめんね、こんな話

理沙ちゃんは、そう私に言った。


「ううん、気にしないで」


「でも、もしも、凛ちゃんとたくむんの事…」


「バレたら、バレた時だよね」


私は、そう言ってコーヒーを飲んだ。


「でも、SNOWROSEのデビューを邪魔してるって絶対!向こうのバンドのファンだって思っちゃうんだよねー」


理沙ちゃんは、そう言いながら怒っていた。


「探偵とか雇ってるって事?」


「そうだよ!絶対そう」


じゃあ、その探偵って蓮見君だったりするって事!!頭の中で、点と点が線になる気がした。


「凛ちゃん、理沙帰るね」


理沙ちゃんは、時計に目をやっていた。


「まっつんさんが、帰ってくるの?」


「何も連絡ないけど…。優太が帰ってきた時にいなかったら寂しいだろうから」


「理沙ちゃんは、優しいね」


私の言葉に、理沙ちゃんは首を横に振った。


「向こうに行ったら、距離あける事になってるから…。だから、今のうちに優太といっぱい過ごすんだ」


「遠距離だもんね」


「それだけじゃないよ!やっぱり、彼女がいたらファンがつきにくいだって」


「そんなものなの?アイドルじゃないでしょ?」


私の言葉に、理沙ちゃんは温くなったコーヒーをいっきに飲み干した。


「バンドもやっぱりビジュアル求められるよ!着ぐるみ着てるわけじゃないから」


理沙ちゃんは、そう言って笑った。


「そうだよね」


拓夢やまっつんさんのビジュアルなら、女性ファンがつくの何て簡単にわかる。


「売れるまでの辛抱だから!大丈夫、大丈夫」


そう言って、理沙ちゃんはグーサインをした。


「すぐに売れるよ」


「そうだね!あっ、じゃあ、行くね」


「私でよかったら、理沙ちゃんが寂しい日は会うから」


「ありがとう、凛ちゃん」


私は、理沙ちゃんに抱き締められる。


「ううん。私の方こそありがとう」


理沙ちゃんがいなければ、押し潰されそうな日々だった。


「じゃあ、またね!何かあったら連絡してね」


「わかった。気をつけてね」


私は、理沙ちゃんを玄関まで見送った。

部屋に戻って、鞄からスマホを取り出した。


拓夢からの着信がきていた。かけ直したかったけれど、理沙ちゃんの言葉を聞いた今出来なかった。


それからは、なんとなくぼんやりとしながら過ごした。片付けをしたり、食事を作ったりした。気づいたら、龍ちゃんが帰ってくる時間で、私は火を止めて慌てて二階に上がった。


「ただいま」龍ちゃんの声が玄関に響き渡る。私は、何も言わずに黙っていた。


ブー


【ご飯、食べさせてもらいます】


龍ちゃんからメッセージがやってくる。いったいいつまでこんな日々を送ればいいのかわからないまま、今日1日がゆっくりと終わっていくのを感じていた。

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