まっつんと朝御飯

駅について、俺は切符を買う。改札を抜けて、階段を降りてくとちょうど電車がやってきていた。


途中で、まっつんに会えるかな?

俺は、ポケットからスマホを取り出してまっつんにメッセージを送っておいた。


電車が、動き出す。電車から、見える景色がどんどん遠くなってく。暫くして、駅に着いた。


「発見!」


やっぱり、まっつんが乗ってきた。


「快速止まる駅だったんだな!」


「そうだよ」


まっつんと合流して話す。


「あのさ、しゅんの兄ちゃんの話覚えてる?」


「ああ、いなくなったやつ?」


「そうそう」


「懐かしいなー」


まっつんは、そう言いながら目を細めてる。


「ちょうど事故があって、かねやんが事故ったとか言い出してさ」


「そうそう!しゅんがわんわん泣き出したよな」


「それそれ」


「智輝がかねやんの頭叩いて、そんなん言うんじゃねーって怒ったよな」


「うん」


「懐かしいなー」


まっつんは、そう言いながら笑っていた。


「あの時のしゅんのお兄ちゃんの言葉が今でも忘れられないわ」


「俺もだわ」


まっつんは、そう言いながら頬を掻いていた。


「しゅんの兄ちゃんいなくなったら俺等の世界死んじゃうんだからな!」


「そうだよな」


「特に、しゅんの世界が消えちゃうんだよな」


「でも、それわかんないんだよな…」


「そんな風に言ってたよな」


まっつんは、そう言って目を伏せていた。


「俺がいなくなったら、理沙の世界が消えちゃうんだよな」


まっつんの言葉に俺は、驚いた顔をした。


「死ぬとかじゃなくて、引っ越したらって話だから」


「あー、そっちな」


「そう。俺が都会(あっち)に行ったらって話だよ」


「まっつんは、どうするつもりなんだ?」


「暫くは、理沙には会えないって話はしてるんだ。さすがに、彼女持ちって難しいからさ」


「売れる為にって事?」


「それだな!やっぱり、彼女いたらファンつきにくいらしい。新しいファンは難しいってさ」


まっつんは、そう言って顎を擦っていた。


「じゃあ、俺も凛に会わない方がいいんだよな」ボソっと言った言葉だったけど、まっつんはきちんと聞いていた。


「それは、一番駄目だぞ」


「だよなー」


俺は、まっつんに苦笑いを浮かべていた。


「いつか、写真撮られたら大変だろ?」


「あ、あぁ」


まっつんは、俺を見つめていた。


「母さんがさ、俺達の事を金に変えたらしい」


「はっ、えっ」


「詳しくは、わからないんだけどさ…。そう言われたんだよ」


「そんな」


俺は、血の気が引くのを感じていた。


「ついた!降りようか」


「うん」


もうそれからは、頭の中は真っ白でどうなってこうなったのかわからないぐらいで…。気づくとお腹はいっぱいだった。


「食べすぎたな」


「そうだな」


どれだけ食べたかわからなかった。口の中を広がるバターの味だけが俺がアンジェロのパンを食べたという証だった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る