いつも通り
相沢さんは、立ち上がって俺の肩を叩く。
「星村君は、知らないフリしていつも通りしてたらいいから!それに、明日は、大事なレコーディングがあるんだから」
「はい」
「じゃあ、早く帰ってさっさと寝る!送ろうか?」
「いえ、一人で帰れますから」
俺は、立ち上がった。
「星村君、俺は君に酷いことを言ったね」
相沢さんは、申し訳なさそうな顔をしてそう言った。
「そんな事ないですよ」
俺の言葉に相沢さんは、「俺もかつては、彼女と一緒になれるって信じてたから」と言って笑った。
「無理なのは、わかってますから」
俺の言葉に、相沢さんはテーブルのカップを下げながら話す。
「結局、既婚者は旦那さんの元に帰っちゃうんだよ。俺は、夢って叶うって信じてたな!頑張ればどうにかなるって…。でもさ、こう言うのって相手次第だろ?」
「はい」
「不倫に限らず。
「はい」
相沢さんは、シンクにカップを置きながらこう言った。
「結局さ、何を持って成功か決めるのは自分次第なんじゃないかって思ったんだよ」
「そうですね」
「
相沢さんは、そう言うと俺の傍に戻ってきた。
「結局、現状で満足できない人間は、どこに行ったって一緒なんだよ!それが悪いなんて言ってないよ。でも、足元に転がる現実と
相沢さんは、そう言っておでこを叩いていた。
「それを努力や才野でなんて無理なんだよ!だって、人を相手にしてるんだよ!自己満足の世界なら叶えられたとしても、相手がいる世界では無理なんだよ」
そう言って、相沢さんは悲しそうに目を伏せる。
「相沢さんの恋も同じだったんですね」
俺の言葉に相沢さんは頷いた。
そして、相沢さんは「あの時の俺にとっての成功は、彼女と結婚する事だった」消えそうな声で呟いていた。
「帰るのに暗くなっちゃったな!やっぱり駅までは送るよ」
相沢さんは、そう言って笑った。
「大丈夫です。俺、色々考えながら帰りたいから」
俺の言葉に相沢さんは、俺の腕を掴んだ。
「駄目に決まってるだろ!星村君が、事故にでもあったらどうするんだよ。やっぱり、送るよ!考え事なら、後部座席で出来るよね?」
相沢さんの言葉に俺は頷いた。
「じゃあ、行こう」
そう言われて、俺は相沢さんと家を出る。俺にとっての成功って何なのだろうか?
相沢さんが後部座席を開けてくれて、乗り込んだ。
何を成功だと言うのかをちゃんと考えてなかった気がする。
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