ゴシップ

相沢さんは、タブレットを手に取ってさっきと違うものを見せてきた。俺は、その写真を見て相沢さんに謝った。


「相沢さん、すみませんでした」


相沢さんは、謝った俺を見つめて口を開く。


「謝るって事は、星村君が、不倫していたのは本当って事でいいのかな?」


相沢さんの言葉に「はい、本当です」と俺は話した。


「相手のご主人とは?」


「会った事は、ありません」


相沢さんは、俺の言葉に眉間に皺を寄せて話す。


「名前出されたりしちゃうと相手に迷惑がかかっちゃうからね。ほら、ネットの世界の人はそういうの調べちゃうから…。どうしようかなー」


相沢さんは、そう言いながらおでこをパチパチと叩き始めた。


「本当にすみません」


「全然気にしなくていいよ!もう、別れてるわけだし…。それに、若い頃は色々あるから」


そう言って、相沢さんは苦笑いをしている。


「もしかして、相沢さんも?」


「そう!22歳の時にね。既婚だって知らなかったんだよ。一年後、彼女の旦那さんが現れてビックリしたんだ。だけど、知らなかったで通すわけにはね」


その言葉に、相沢さんの絶対に叶わないの意味がようやく理解できた。相沢さんは、また何かを考え始める。


「あの、ジャケット写真とPVの女性」


「あー、皆月さんだよね!星村君がどうしても彼女がいいって言ってたよね」


「彼女なんです。これ」


目の前に置かれたタブレットの画面を指差すと、相沢さんは、口をあんぐりと開けて固まっていた。


「そうなりますよね」


「いや、ごめんね。急な展開で驚いて」


「いいんです」


「でも、何で?彼女と?」


俺は、その言葉に深呼吸をひとつしてから話す。


「凛は、子供が出来なくて…。ちょうど、あの頃の俺も智の事で絶望してて…。それで、お互いの想いが繋がったっていうか…」


「共鳴しちゃったんだね」


相沢さんは、そう言って頷いていた。


「すみません」


「いいんだよ!謝る必要なんてないよ。世間には、叩かれるだろうけど…。そういう時ってあるんだよ!結婚してから気づいたからわかるよ。家庭とかしがらみとか逃げ出したくなる時があるんだよ。人間は、仏様や神様じゃない。だから、仕方ないんだと思う。皆月さんは、子供を作る事から逃げたかったんだろ?」


相沢さんの言葉に、俺は頷いた。


「わかるよ!俺も、不妊治療少しだけやったんだよ!奇形率が高くて。不規則な生活だから、タイミングもなかなかうまくいかなくて!やれ、サプリだ、ご飯だ!今日は早く帰ってこいや排卵までにしないととか…。もう、義務でしかなかったよ。だから、俺は、仕事に逃げた。二年後に授かれたから、俺はそれから解放されたけど…。皆月さんは、そうじゃなかったんだろ?」


「はい」


俺の言葉に、相沢さんはニコッと笑った。


「それなら、仕方ないよ!皆月さんにとって、星村君とのその時間も今の時間も必要なものだってわかるから!さっきも話したけど、命ってものだけはどんな事をしてもうまくいかないのわかるから…。まあ、心配しないでよ!社長は、逆にスキャンダルを喜んでるから」


そう言って、相沢さんは顎に手を置きながら笑ってくれていた。

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