俺を全部食べられたい【カクヨム版】

「ごめん、鍵。鞄にあるから、開けてくれる?」


「うん」


家の前について、俺は凛にお願いした。


「ほしーむらさん」


お隣の伴さんが、出てきた。


「こんばんは」


凛も会釈をしている。


「かーのじょ?わー、キレイ!ビックリです」


伴さんは、凛を見つめながら驚いたように目を見開いた。俺は、それが何だか照れくさかった。


「今から、ラブラブですか?」


「えっ、いや、ご飯です」


俺は、そう言って苦笑いを浮かべた。


「そうですか!そうですか!私は、仕事ね!あっ!ほしーむらさん。これわたしてって」


そう言って、俺は伴さんから茶色の封筒を受け取った。


「ありがとうございます」


「はいはーい。バイバイ、かのじょ」


「はい」


「かわいーね!かわいー、いいね、いいね」


伴さんは、凛を見つめながらニコニコ笑っていなくなった。


「面白い人だね」


凛は、そう言ってニコニコ笑って鍵を開けてくれる。


ヤバい、俺は隣人に焼き餅妬いてる。


凛が開けてくれて、中に入る。


「凛」


「何?」


「ヤバい、俺。焼き餅妬いてる」


俺は、紙袋とスーパーの袋を玄関に置いた。

玄関の鍵を締める。


「焼き餅妬いてるの?さっきの人に?」


凛は、そう言って俺を見つめる。


「そう、駄目だよな。俺、駄目だよな」


俺は、そう言って凛を引き寄せる。


「拓夢、玄関だから」


「前も、玄関だっただろ?」


「そうだけど」


さっきから、凛への独占欲が止められない。心臓むねの高鳴りが止められない。


「凛の中に、全部丸ごと入りたい。俺を全部食べてよ。凛」


涙が止まらなくなる。


「凛を誰にも取られたくない。これ以上、誰かに見つけられたくない。お願いだよ、凛」


俺の涙を凛が指で拭ってくれる。


「食べてあげようか?」


「凛……どうやって」


「ここだよ!それに、ここに」


凛は、そう言って俺のそこに触れて唇に唇をゆっくり重ねてくる。


さっき渡された手紙が床に落ちる。


「んっ」


俺は、濃厚なキスをする。凛は、背中に回した手で服をギュッと掴んでくる。


押さえていた気持ちが溢(あふ)れ出す。凛は、さらに俺のを握りしめてくる。


ヤバい、凛の中に全部入りたい。早く入って、吐き出してしまいたい。


唇をゆっくり離した。


「手紙落ちたよ」


凛は、蕩けた顔を向ける。


「そんなのいいよ!吐き出したい。凛の中に、全部…」


「したいって事?」


俺は、ゆっくり頷いた。


「いいよ。なおしたら、しよう」


そう言って、凛は俺の頬を撫でてくれる。


「凛を食べたい」


「いいよ」


凛の目から、涙が流れ落ちてくのが見える。

俺は、凛の全てを飲み干して胃袋におさめてしまいたい。

俺も、凛に胃袋におさめられたい。


「冷蔵庫にしまってくるね」


凛は、そう言って、ビニール袋を取ろうとする。


「俺が持つよ」


俺は、買い物袋と紙袋を持った。


「ありがとう」


「うん」


リビングに持っていく。


「しまうね」


「ありがとう」


凛は、袋を俺から取って冷蔵庫にしまってる。自分が、こんなにも、焼き餅を妬く人間だなんて思わなかった。俺は、さっきの手紙の中身を開いた。


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