買い物して、帰宅

「買う物決まってるから」


凛の言葉に、俺は買い物かごを持った。


「入れていっていい?」


「うん」


俺は、凛の後ろをついて歩いて行く。さすが、凛は主婦だ。


どんどん買い物かごに商品が入れられていく。俺は、それを見つめている。


「材料は、これで大丈夫だよ!」


最後の卵のパックを乗せて、凛が俺にそう言った。


「じゃあ、帰ろう」


俺は、凛の手を引いてレジに向かった。


「いらっしゃいませー」


ギャルの店員さんが、気だるそうにしながらレジをしてくれていた。お会計が表示され「クレジットで」と言って支払った。


「ありがとうございましたー」


俺は、お辞儀をしてかごの商品を袋につめる。何も言わなくても、札のようなものを入れるだけで袋をくれるこのスーパーは便利だと思った。ビニール袋に、商品を詰め終わる。


「スーツ持つよ」


凛が、そう言ってくれるけれど、俺は「大丈夫」と笑った。

どうせ、すぐにタクシーに乗るのだから…。今、両手が塞がっていてもいいと思ったからだ。


凛は、スーツと服の紙袋を持った俺の腕に腕を絡ませてきた。


「こうしたら、手を繋がなくても大丈夫でしょ?」


そう言った凛の顔が可愛すぎて、今すぐ抱き締めたかった。俺は、恥ずかしいのがバレないように「そうだね」と言って笑った。


凛の胸が腕にあたる。心臓がドキドキと鼓動を叩いてるのを感じる。


「タクシー乗ろう」


「うん」


駅前のロータリーにつくとタクシーが数台止まっていた。俺と凛は、タクシー乗り場でタクシーに乗る。


「どこまで?」


おじさんに言われて、俺は住所を伝える。


「はい、はい」


タクシーの運転手さんは、そう言ってドアを閉めて走り出した。俺は、荷物を床に置いてシートベルトをする。


「ご夫婦?」


「えっ、あ」


「はい、そうです」


うまく言えない俺の代わりに凛がそう答えた。


「いいね!美男美女だね。羨ましいよ。私は、女房とそんな風にもう出掛けないからね」


タクシーの運転手さんは、そう言いながら笑っていた。

俺は、凛が夫婦だと言ってくれた事が嬉しくて、顔がにやけそうになる。


「二人は、新婚さんでしょ?」


「あっ、はい」


「やっぱりなー。そんな感じがしたんだ。まだ、一年いかないぐらいかな?」


「はい」


「いいねー。今が一番幸せな時間だよ!大切にしないとね!いやー、本当。羨ましいなー」


タクシーの運転手さんは、そう言いながらニコニコ話してるのが伝わる。この人の前では、凛と夫婦に見えている事が、俺は凄く嬉しかった。


凛は、俺が膝においてる手を握りしめてくる。俺は、ドキドキがバレないようにそっと握り返した。暫くすると「ついたよ」と言われた。


俺は、料金を払う。


「色々あるけど、夫婦仲良くね!嫁さんを大事にするんだよ」


運転手さんは、お釣りを俺に渡しながらそう言ってくれる。


「はい、ありがとうございました」


「こちらこそ、ありがとうございました」


ドアが開いて、俺と凛はタクシーから降りる。タクシーは、すぐにいなくなってしまった。


凛は、さっきみたいに腕を絡ませてくれる。

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