帰宅と凛の話
俺と凛は並んで歩く。凛がいるとやっぱりキラキラしてる。この暗闇も全部愛せるから不思議だ。
俺の家について、鍵を開ける。
「何か、久しぶりに来たみたいに感じるね」
凛は、玄関に入った瞬間に、そう言った。
「確かに、久しぶりではあるな!」
俺は、鍵を閉めながら、そう話した。
「拓夢、私」
「うん」
「夫と家庭内別居してたの」
俺は、その言葉に凛を見つめて固まっていた。
「もう、私達、駄目だよね」
「いつから?」
「2日前…」
「まだ、大丈夫だよ」
俺は、荷物を置いて凛の頭をポンポンと撫でる。
「龍ちゃん、優しすぎるから」
凛の旦那さんが、龍ちゃんという名前だって、俺は初めて知った。
「龍ちゃんと別れたくないんだよな?」
「あっ、ごめんね。いつもの癖で」
俺は、凛にわざと言った。だって、龍ちゃんと呼ばれた、その人は凛の事を幸せに出来る人だってわかるから…。
「謝る必要なんてないよ!玄関だから、中に入ろうか」
「うん」
俺は、袋を持ってキッチンに向かう。凛も、後ろをついてくる。
「凛、聞かせてくれる?」
「何を…」
「旦那さんと何で家庭内別居になったのか…」
俺の言葉に、凛は俺を見つめる。
「先に冷蔵庫いれるよ!飲み物は?お酒がいい?」
「何でもいい」
俺は、冷蔵庫にさっき買ってきた食品を入れる。冷蔵庫から、ビールとチーズを取り出しグラスを2つ持っていく。
「ビール飲みたいから付き合ってくれない?」
俺は、凛にそれを渡した。
「うん」
凛の隣に並んで座る。凛は、缶を開けてビールを注いでくれる。
「乾杯」
「乾杯」
凛は、渡したキューブ状のチーズを捲りながら口に運んで泣き出した。俺は、それを気にしないようにチーズを取って捲って口に放り込んだ。
「龍ちゃんってあの子が言ったの」
凛は、そう言って泣いてる。
「うん」
「理沙ちゃんが、連絡してくれて…。あの子が出て、龍ちゃんって言ったの」
「うん」
「龍ちゃんって呼んでるのは、私だけなの。何で、あの子が知ってるのって…。そればっかり頭の中を流れちゃって。それで、お酒飲んでたから…。フラフラした私を支えてくれようとした龍ちゃんに触らないでって言っちゃったの…。本当の事、何も確かめてなかったのに…」
凛は、そう言いながら手で涙を拭っている。俺は、ティッシュの箱を取って凛の前に置いた。
「拓夢、私、最低だよね。私は、拓夢に抱かれてた。凛君とだって…。だから、龍ちゃんも別の人とそうなればいいって思ってた。なのに、現実にそうなったんじゃないかって思ったら許せなかったの」
凛は、そう言いながら涙を必死で拭っている。
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