行ってみたい

理沙ちゃんは、「そうなんだよねー」と言いながら笑っていた。


「喧嘩した?」


「してない、してない。ただ、理沙が優太の邪魔になりたくないなーって勝手に思ってるだけ」


「邪魔なわけないよ!」


「だよねー。でも、何となく帰りたくなくてね」


「今日は、まっつんさんの家に行くの?」


理沙ちゃんは、私の言葉にうんうんと頷いた。


「兎に角、電車乗ろう」


「うん」


私と理沙ちゃんは、改札を抜ける。


「明日休みだから、優太の家に泊まりに行く予定なの」


「うん」


ホームに続く階段を降りながら話す。


「でもね、何となく。行きたくなくて」


「掲示板のせい?」


「そうなんだよねー。何か、また書かれちゃったらって思ったら怖くて」


理沙ちゃんの気持ちが私には、よくわかった。


「まっつんさんも呼んだらどうかな?」


「えっ!駄目だよ」


「どうして?」


「たくむんに話したりするかもでしょ?」


「言わないと思うんだけど…」


私の言葉に理沙ちゃんは、頷いていた。


「そうだね、優太は言わない。何を知っても、何を聞いても、自分が言わなくていい、聞かなくていいって思ったら黙ってるから」


「優しい人だね」


「優しいだけじゃ駄目だよね」


理沙ちゃんは、そう言って私を見つめる。ホームにつくと、ちょうど電車が行ってしまった。帰るなって言われてるみたいに感じる。


「呼んでよ!四人で、ご飯食べよう」


私は、理沙ちゃんの手を握りしめる。


「いいの?凛ちゃん」


「いいに決まってるじゃない!私も、ほら二人で居たくないから…」


「わかるよ!その気持ち…。でも、何食べる?」


「個室がいいなら、知ってる場所あるけど…。リーズナブルではないのよね」


「高いの?凄く高い?」


「高級店って感じじゃないのよ。ただ、チェーン店ではないってだけで」


理沙ちゃんは、目をキラキラと輝かせてる。


「凛ちゃんが行く所、行ってみたい」


「本当に?」


「うんうん!本当に」


「じゃあ、行こう!予約してみる」


「うんうん!」


私は、スマホを開いて予約をとる。ラッキーな事に、七時半が空いていた。


「七時半なら空いてたよ」


「何て名前?」


「個室居酒屋のはやしってわかるかな?」


「調べてみる!」


理沙ちゃんは、スマホで調べる。


「わー、めっちゃおしゃれ!ここでしょ?」


「そう」


「凄い、一駅向こうなんだね」


「そうなの」


「優太に送ってみるね」


「うん」


ガタンゴトンー


電車がホームに入ってくる。


「じゃあ、帰ろう」


「うん」


私と理沙ちゃんは、電車に乗る。帰りは、快速はないらしくて特急電車に乗った。

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