相沢さん

ピコンー


エレベーターがやってきて乗り込んだ。


「相沢さんの記事読んだ?」


「うん」


「相沢さんって、凄いよなー」


「うん」


「どんな人も、相沢さんは一流にしちゃうんだぜ」


ピコンと言って、扉が開いた。


「ついた」


元々は、大きなレーベルの重役だったこの事務所を立ち上げた社長さんは、智天使ケルビムの為のレーベルを新たに設立させて欲しいと交渉を繰り返した。その結果、このレーベルは設立された。そして、元々の大きなレーベルの傘下に入る事が立ち上げの条件だったって聞いた。


熾天使してんしエンターテイメント】と書かれている。


「これが、事務所の名前かな?」


「さあ?」


「それが、そうだね」


俺とかねやんは、ビックリして振り返った。


「ああ、ごめんね!驚かしちゃった?」


相沢さんが、立っていた。


「いえ」


智天使ケルビムの為に立ち上げたからには、こっちも天使、使わなきゃって話で!熾天使になったんだ。あー、元々は智天使ケルビムしか所属させるつもりが社長がなかったんだけどね!連れてきちゃったんだ」


そう言って、相沢さんはニコニコ笑っている。


「凄いですね!」


かねやんの言葉に相沢さんは、ニコニコ笑いながら笑って首を横に振った。


「凄いのは、バンドマン達だよ!凄く上手なのに、売れないって烙印らくいん押されて落とされてばかりだろ?それは、間違ってるって思ったんだ。売れないのは、売り方次第じゃないのかってね」


そう言って、相沢さんはニコニコ笑ってる。


「じゃあ、松田君と瀬戸君は、ついてるから行こうか」


『はい』


俺とかねやんは、相沢さんについていく。暫く歩いて部屋に通される。まっつんとしゅんが、おじさんと待っていた。


「社長、二人も連れてきました」


相沢さんの言葉に背筋が、ピンとする。


「こんにちは!社長の楠です」


『よ、よろしくお願いします』


俺とかねやんは、深々と頭を下げる。


「まぁ、まぁ、そんなに固くならなくていいから!相沢から、聞いているよ!さっき、松田君と瀬戸君にも話したんだけどね…。今回、Artemis《アルテミス》のかわりに突然頼んだ事申し訳ないと思ってます」


「そんな事ないです。こんなチャンスをいただけて本当に光栄です」


俺の言葉に、社長さんはニコニコと笑った。


「この仕事は、タイミングが全てだと私は思っている。Artemisは、今回そのタイミングを逃した。だけど、Artemisの方がSNOWROSEの何倍もファンがいるんだ」


社長さんは、そう言うと俺達四人を見つめる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る