いなくても、乗り越えなきゃ
スマホを取り出して、SNSを開いた。学生の頃は、同じ場所にいた彼女達は、みんな母親になっていた。私だけが取り残された絶望。
人と競い合ったりするもんじゃないでしょ?結婚も子育ても…。そうTVのアナウンサーが話していたのを聞いた。でも、競い合うように仕向けてくるのは女だからなのか?マウントをとったり、上から目線で押し付ける。女性特有のあるあるなのだろうか?
わざわざ、赤ちゃん産まれました報告の入った年賀状、用事があって久しぶりにメッセージをしたら二人目出来ちゃった報告、SNSに上がってる子供への愚痴や嬉しかった事発信。めんどくさいのが女なのだ。
私は、SNSを切った。
拓夢に送るメッセージを作っては消す。【会いたい】【今すぐ会いたい】【助けて】【忘れたいよ】
「はぁー。何やってんだろ」
私は、メッセージを削除した。迷惑をかけてはいけない。これから、拓夢は夢に進んで行くんだから…。龍ちゃんが優しくしてくれるのは、嬉しい。でも、逃げたくなる。
赤ちゃんを抱かせてあげれない無能な嫁という立場を捨てていなくなりたい。お母さんは、何も言わなくなった。けど、本当は孫の顔を見たいに決まってる。
言われない圧力っていうのもあるんだよ。私の両親も何も言わない。けど、どこかで龍ちゃんが悪いって思ってると思う。実家に帰った時に、感じる事がある。それを龍ちゃんは感じないフリをしてるんだと思う。
「ごちそうさまでした」
私は、トレーを下げる。キッチンのシンクにお皿を置く。コップに入ったビールをいっきに飲み込んだ。
「割ったコップ片付けてくれたんだ」
コップを、割れたままシンクに放置していたのを思い出した。けど、もういなかった。割れ物をいれる小さなゴミ箱を開くとコップが入っていた。
こういう所が堪らなく好きだった。
私は、お皿を洗って布巾を絞った。ダイニングテーブルを拭いて戻ってくる。
「さて、歯磨いて寝るかなー」
パタパタと洗面所に行って歯を磨く。夫婦二人の生活。そんなの考えてなかった。結婚したら子供を授かって、龍ちゃんと子育てをする。そして、子供が巣立ち。二人になって、お茶を飲みながら話す。何てのを想像していた。歯を磨き終わって、鏡の私を見つめる。
「女に産まれた意味あるの?」
ほろ酔いの私は、冷めた目で私を睨み付けた。
「あんたの人生、可哀想だね」
ボロボロ涙が流れてくる。ほら、さっきSNS見るからだよ。気になって、ゆきゆきコンビのやり取りを見ちゃった。
【子供いない人間の人生って可哀想】
【わかる!結婚も子供もいないやつの人生って可哀想すぎて終わってる】
「お前の人生のが終わってる!」
そう言って、頬のひとつでも叩いてやれたら、スッキリするのかも…。私は、涙を拭って洗面所を出る。
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