凛の最後の話2

別れた後

理沙ちゃんと別れて、私は家に帰ってきた。


「おかえり」


「ただいま」


リビングの扉を開けると龍ちゃんがお笑い番組を見ていた。


「どうだった?友達」


「うん、仲直りするって」


「そっか、よかったな」


そう言って、また龍ちゃんはお笑い番組に視線を向ける。私は、洗面所に行って部屋着に着替えた。拓夢が、夢に近づけたのが嬉しい。会って、おめでとうって言ってあげたい。顔を洗って、龍ちゃんの元に戻った。


「面白い?」


「あー、うん。何だっけ?このコンビ好きなんだよなー」


「何かわかる気がする」


「あっ、そうだ!凛、明日何する?」


「特に予定はないよ!」


「じゃあ、映画見に行かない?俺、最新作見たいんだよ」


龍ちゃんにスマホを見せられる。


「これって、しんだよね?」


「うん、うん」


「見たい、私も」


「じゃあ、行こう」


「わかった!台の上片付けてくれてありがとう」


「冷蔵庫な!入ってる!餃子」


「ありがとう、チンして食べる」


私は、そう言って冷蔵庫に行く。龍ちゃんと私にとって、しんの描く物語は特別だった。ボーイズラブが苦手な龍ちゃんも

しんの物語には泣いていた。あれから、私達はしんを気に入った。そんなしんの最新作が見れるのは、嬉しい。私は、冷蔵庫から取り出した餃子とご飯をレンジに入れてスイッチを押した。


不妊というテーマにハッピーエンドがない作品は、しんの作品が初めてだった。ポケットから、スマホを取り出した。しんの最新作を検索する。

これ、拓夢が好きなバンドの人だ。


【今回も、しんさんの作品の曲を書ける事を嬉しく思います。俺の中のしんさんの作品は、左に見えるのは雪景色で、右に見えるのは常夏って感じのイメージなんです。右側にある場所にいけない左側の人の目線と中間の人。少数派であるそちらに向けられた物語。それが、俺の中でのしんの作品です】


ピー


レンジが鳴った。私は、スマホを閉じる。拓夢が好きなバンドのボーカルの人に何だか興味を持った。


餃子とご飯をトレーに乗っける。さっき、龍ちゃんが作ってくれたタレを冷蔵庫から取り出した。後、黒豆茶とお箸。


ダイニングテーブルに持っていく、「いただきます」と小さく言ってから、トレーからおろさずに食べる。


モグモグと食べなから、明後日、龍ちゃんにどんな言い訳をしようか考えていた。


「あー、笑った、笑った」


龍ちゃんは、そう言って私の隣に座ってくる。


「うまい?」


「うん、美味しい」


「よかった」


「うん」


龍ちゃんは、ニコニコしながらビールを飲んでいる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る