昼飯食おうよ

番号を見ずに出てしまった。


『拓夢、昼飯食おうよ』


「かねやんか!まっつんとしゅんも?」


『どっちも直接行くって!でも、俺、験担ぎしたいんだよねー』


「カレー食いに行くの?」


『そう!駄目かな?』


「まぁー、いいよ!」


『やったー!あれ、食べないと何か不安なんだよなー。わかるだろ?拓夢』


「何となくだけどな!」


『じゃあ、30分後に駅前で待ってるからな!』


「はーい」


プー、プー


かねやんとカレーを食べに行く約束をしたのは、ただ単に家に一人でいたくなかったからだった。別に、カレーを食べなきゃいけないとかそんなのはなかった。

しゅんが行くなら誘われなかっただろうから…。しゅんに感謝していた。俺は、服を着替える。


ギター持っていかないでいいのは、楽だった。昔は、ギター弾きながら歌ってた。だけど、智がそのスタイルだと売れない気がすると言ったのだ。俺とギターが合わないとハッキリ言われた。で、ギターを持たないスタイルに変更させられた。でも、そのお陰で一気にファンが1000人も増えた!智には、才能があると思った。そういうのを見つけられる才能…。


用意が出来た俺は、スーツケースを持って玄関に来た。靴箱から、バンド用の革靴を出して履く。先の尖ってる革靴を履けと言ったのも智だった。ドSキャラを作れと言ったのも智だった。逆に、しゅんは犬系にされた。かねやんは、ハチミツのように甘い男子を演じさせられて、まっつんは兄貴的な存在にさせられた。そして、智、本人はクールな男を演じた。それぞれにキャラクターが出来上がった瞬間、ファンが2000人増えたのがまた面白かった。ただ、俺はまだSを演じきれていない。


鍵を閉めて、スーツケースをゴロゴロと転がしながら歩く。シークレットだけれど、ファンは来てるのだろうか?milk《ミルク》のファンの前で歌うのは緊張するな!


駅につくとかねやんが待っていた。


「ドS王子、おせえーよ」


「ごめん」


「謝るなよ!キャラクターいかせてないじゃん」


「あー、そうだよな!なかなかね」


「そのままいくわけ?キャラ変とかしないの?」


「どうかな?相沢さんが、決めるんだろう?」


「まあ、そうなるよなー。でも、正直!甘々キャラは変更でもいいけどな」


「続行かもな」


「マジかよー」


かねやんは、あからさまにガッカリとして見せながら笑った。


「じゃあ、行くか」


「うん」


甘々キャラは、どっちらかというとしゅんな気がするんだけどなー。やっぱり、かねやんの優しい声が駄目なのかな?

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