もう一回寝よう

俺は、頭を洗って体を洗って、シャワーから上がった。タオルで、頭をガシガシと乾かしながら…。凛と終わらせる事を考える。


どう頑張っても、世の中的にはNG《エヌジー》なのだ。

この先、進んでいく俺の未来の為にも…。

凛の為にも…。

この関係は、よくない。平田さんの母親が、俺に言った言葉達が浮かんでは消える。


「あーあー」


わかってても、イライラする。俺は、バスタオルを肩にかけて洗濯物を洗濯機の上に設置した棚にあるハンガーにかける。


お互いの荷物きずを預けたせいかな?


俺にとって、凛は必要不可欠な存在になっていた。


「やり過ぎたからか、体はもう凛を覚えてるよ」


そう言って、洗面所の鏡を見つめる。


「泣いたら、目が腫れるから駄目だって!夢だったんだろ?メジャーデビューするのが!」


俺は、鏡に映る俺を人差し指で指差した。


夢なんかより、凛といたい。今の感情(きもち)に流されてしまいたかった。

でも、それは今この瞬間だけの想いで!

きっと、五年、十年先の未来なら俺は後悔してる。だから、ちゃんと進まなくちゃ…。


俺は、髪を乾かしてキッチンに戻った。蛇口を捻って、水道水をグラスに注いで飲んだ。


もしかして、凛からメッセージきてるかもしれない。


飲み終わって、ダイニングテーブルの上のスマホを見つめる。何もきてなかった。100%に充電がなってるのを確認して、俺はスマホをケーブルから抜いた。


ベッドにゴロリと横たわる。


【凛】と書いてある電話帳を撫でる。


発信ボタンに手を伸ばそうとしてやめる。


「凛、俺。今、凄い話したい」


スマホに向かって独り言なんか話して馬鹿みたいだ。それでも、俺は凛と凄く話したいんだ。


「もう、寝よ」


目覚ましをセットし直して無理やり目を瞑る。凛は、まだ絶望の中にいるよな!

俺、約束通り連れてくよ!


凛を新しい場所へ



ピピピ、ピピピー


「う、うーん」


どうやら、寝れたみたいだった。俺は、手探りで目覚まし時計を止める。

スマホを見つめるけど、まだ誰からの連絡もなかった。


凛、来ないのかな…。


俺は、ベッドから起き上がってペタペタと洗面所に向かった。


「さぁー、頑張るか!」


鏡の俺に向かって気合いをいれる。顔を洗って、歯磨きをする。洗面所から出るとスーツケースを持ってくる。これは、バンド用に使ってるやつ。化粧品やお洒落なスーツが入ってる。


俺は、中身を確認する。


「忘れてるのは、ないよなー」


リリリリーンー


「はい」


ダイニングに置いていたスマホを取った。


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