愛せない苦しみ

「危ないです」


俺は、まっつんの母親からグラスを取り上げた。


「拓夢君っていい男だねー」


「そんな事ないです」


「同じ年なら好きになってたわよ」


酒に酔ってるからか、まっつんの母親はグイグイと俺に近づいてくる。


「拓夢君、今日はありがとね」


「いえ」


「拓夢君の両親みたいに優太を幸せに出来たら違ったのかな?」


そう言って、ボロボロと泣き出した。


「ティシュ、と……」


そう言った瞬間、キスをされる。俺は、何の抵抗も出来なくて…。それを容認と受け取ったまっつんの母親は、俺を床に倒した。


「あの…」


「拓夢君、嫌?」


「えっと…」


おばさんだからとか、そんなんじゃなくて、まっつんの母親だからどうしていいかわからない。


「嫌だよね、拓夢君」


「えっと」


お酒のせいで、うまく思考が回らない。


「でもね、いったんこうなっちゃうと止められないの!ごめんね」


「えっ、それは…」


カチャカチャとベルトがはずされる。ジーとズボンのチャックがおろされる。まっつんの母親は、独身だ。だけど、そんなの関係ない。パンツをおろされそうになって、必死で掴む。


「拓夢君、お願い」


潤んだ目を向けられる。俺は、信じられないぐらい女性の涙に弱い人間だった。


「でも、これは」


「優太に言わなければいいだけ」


「まっつんを裏切って」


「大丈夫だから!酔ったうえの出来事!誰も悪くない。シッー」


唇に人差し指を当てられる。まっつんの母親は、セクシーな人だった。初めて会った時にまっつんが俺達に言った。


「あの女、セックス中毒だから!気を付けろよ!お前達の事、襲うかも知れねーから」


だけど、そんな事は一度もないまま今までやってきたのだ。なのに、今!まさに、そうなろうとしてる。よくない、よくない事なんだ。


「拓夢君、大丈夫だから」


俺は、流れた流れて流れて流された。快楽を優先したんだ。まっつんの母親は、俺のそれを優しく触れてくれて…。美紗の事で、落ちていた俺の傷を拭ってくれるようで…。気づけば、俺は無我夢中でまっつんの母親を抱いていた。


「拓夢君、ありがとう」


それは、朝まで続いた。終わった頃、俺は絶望感と申し訳なさに襲われた。


「うっ…」


自分がした最低な行為に吐いた。胃袋が空になっても吐き続けた。酒がなくなったのを感じた。頭が信じられない程、痛くて…。トイレで泣いてた。


自分の弱さと流されやすさを呪った。墓場まで、持っていく。そう決めた。疲れて、ソファーで横になっていた俺の顔をまっつんの母親が見つめていた。


「拓夢君、ごめんね、ごめんね」


そう何度も言いながら…。

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