拓夢の話10

飲み過ぎ…【カクヨム版】

「飲みすぎだよ」


「あんたみたいなんにね!何がわかんのよ」


平田さんの母親は、そう言ってビールの缶を俺から奪った。俺は、何も言えずにいる。


「凛はね!本当に可愛かったの!こんな小さな頃はね。でもね、私、凛をうまく愛せなかった」


俺は、それを聞くしか出来なかった。


「死んじゃえって何度も言ってやった!いつまで生きてんのって!愛されたくて必死だねーって」


平田さんの母親は、ビールをゴクッゴクッ飲んだ。


「可愛くないのよ!わたしね!子供が大嫌いなの」


そう言って泣いてる。


「凛はきっと愛されてないって思って…。傷ついてる。でもね、星村さん。愛せない方も傷ついてんのよ!わかる?」


その言葉に、俺は頷いていた。


「わかるの?何で?わかるの?」


「危ない」


フラフラして、倒れそうになる平田さんの母親を支える。


「星村さん、いい男だね」


「いや!」


平田さんの母親にキスをされて驚いた。


「振りほどかなきゃ、もっと先にいっちゃうよ」


振りほどけなかったのは、多分あの人と重なってるからだ。俺が何も抵抗しないのを容認と受け取ったようで…。平田さんは母親は、俺にさらにキスをしてくる。それは、まるであの日のあの人みたいで…。


【拓夢君、ごめんね!ごめんね!】


何度謝られたか覚えてなかった。


「あっ!」


そこに手をやられた。


「ぶっ、あははは」


「すみません」


「こんなおばさんじゃ無理よねー」


「いえ、そうじゃなくて!どうやら、機能不全なんです」


平田さんの母親は、俺をジッーと見つめて、どこかホッとした顔をした。


「あんたが、使えないやつでよかったよ」


「すみません」


「謝られたら、惨めになるだろ」


少し低めの声…。


「悪いけど、晩御飯の場所に行くまで!ちょっと休んでいい?」


「どうぞ」


「飲み過ぎちゃったみたいだから」


そう言うとフラフラと立ち上がった。


「連れてきますよ」


「悪いね」


俺は、ベッドまで連れていった。


「ちょっと休むね」


「はい、どうぞ」


俺は、頭を下げてからさっきの場所に戻った。愛せない方も苦しんでる。平田さんの母親は、きっと産まれた時は愛していたんだと思う。

でも、愛する人が、不倫していなくなった事をきっかけに愛せなくなったんだと思う。子供を愛してるって難しいんだな…。期待したり、あてにしたり、結局無償の愛なんて人間にはほとんど存在しないのかもな…。


俺は、頭を掻いて悩む。俺だって、凛に期待してるんだよな!旦那さんと別れて欲しくはないけど…。俺の事を少しでも好きではいて欲しくて…。


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